2006年10月アーカイブ

多文化関係学会2006年度第5回年次大会は立教池袋キャンパス開催。二日目、10/22日曜にセッション4のB会場で発表した。題目は「華人社会における抗日世論の形成podcast-original3.gif
2005年度中のマレーシアでの海外研究時の経験を元に話をした。以下は当日のレジュメより。実質25分くらいだったので、結論を急いで頑な印象を与えていたかも。しかし、覆水盆に返らず。こうした意識が解消されないことを織り込み済みで、日本はアジアの中でやっていくしかないという結論は、今のところ変え難い。

*はじめに—中国留学生からの手紙
-“中国人や韓国人の若者の「二重の日本観(親近感と憎悪)」を今現地ですごく感じています。”
-外から見た国家と文化の乖離
--例:戦後日本人のアメリカ観
*2005年中国反日デモをどう見るか
-“(日本の国連常任理事国入り反対署名が)一カ月もたたないうちに世界中の華人三〇〇〇万人の署名が集まったという。これを知ったとき、この反日デモは一九八五年のそれ(中曽根首相の靖国公式参拝時)とは明らかにちがう、たんに歴史に根ざしているだけではなく、アジアでのパワー争奪がいま始まりつつある、と痛切に感じたのである。”[毛里和子『日中関係』岩波書店、2006]
-華人と中国は一蓮托生か?
-抗日行動の度に日本の華僑研究は隆盛
*華人社会における世論形成
-反日教育のない華人社会
--マレーシアの状況
-世代による差異
-民族内グループによる差異
--民族による差異
*2005年マレーシアの反日行動について
-マラヤ大滞在中のため、期せずして参与観察を経験
--「日本」をどのように捉え、どのように発信していくか
-2005年4月(中国大陸での反日デモ)以後のマレーシア華人社会
*戦争と記憶—オーラルヒストリーの取り組み
-マレーシア
--Documentation Branch, National Archive of Malaysia
-シンガポール
--Oral History Centre, National Archive of Singapore
-2005年以降の主要出版物
--マレーシア
李永球『日本手: 太平日據三年八箇月』PJ: Strategic Information Research Development. 2006
--シンガポール(参考)
Lee Geok Boi THE SYONAN YEARS: SINGAPORE UNDER JAPANESE RULE 1942-1945. Singapore: National Archives of Singapore and Epigram. 2005
*2005年の馬華文学作品より
-文戈
--1953年ジョホール生まれ。現在、南洋理工大学人文社会学部助教授。
「林の中の歳月:母の語った話」(南洋商報、2005.4.26-5.10)
-シルビア・シエン
--1966年マラッカ生まれ。マラヤ大学中国研究学部卒。日本留学後、現在ドイツ在住。
「私の代わりに謝っておいてください」(星洲日報、2005.11.27)
*考察
-華人にとって抗日世論とは
--マレーシア華人としての多重アイデンティティの一部
-世代による差異は再生産される
--五十台以降の保守化、一種の転向か
-私個人としての対応
--どこでだれと何語で話すときでも、同じことを言いたい

国連合同写真展『アンコール遺跡の尊顔』日本展(06/10/19-24、於大丸ミュージアム東京)のオープニングレセプションへ行く。撮影者の斉藤氏はじめ、早大建築史の西本先生、地域地盤環境研究所の岩崎さんら旧知のアンコール仲間に会う。写真展の方は、特に斉藤さんのコーナーはアンコールの石林さながらで、学生600円は安いと思う。ふと撮影年を見ると、私もミッションを共にした1995年の写真がかなりある。バイヨンのまわりに足場を組み、尊顔を正面から取りまくっていた様子を昨日のことのように思い出す。
クリス・レイナー(この人も1995年当時サイトに来て撮影していたよう)のコーナーには例の印象的な、遺跡の前に座す入れ墨僧侶の写真も展示されている。

 マレーシアから帰国して懐かしい食は、ママストールのロティチャナイとコピティアムのカヤトースト。ロティチャナイは都内でキャラバンカー販売がはじまり、カヤトーストはららぽーと豊洲に出店したと聞いて心躍った。でも、実際行ってみると何か違う。味ではなく、雰囲気が懐かしさを醸し出していたことを改めて知る。
 コピティアムとは中国語福建方言で「珈琲店」のことである。華人の五大幫(グループ)の中でも、福州人、海南人が経営しているのがほとんどだ。ショップハウス(店屋)は日本で言えば町家だが、コピティアムはこの回廊で連なる二〜三階建ての長屋の一階に、オープンカフェとして朝から晩まで営業している店が多い。天井には直付けの大きな扇風機がぐるぐる回っており、虫除けの役目も果たしている。奥のスペースは冷房が効いていることもある。
 テーブルクロスのない丸卓と、背もたれのないイスに好みの場所を決めると、それぞれ店によって特別の入れ方をしたコーヒーを、コピO(ブラック/福建南部方言)、コピC(砂糖ミルク入り/海南方言)などと頼む。カヤトーストとゆで卵も欠かせない。
 シンガポールのキリニーのようにファストフードさながらのチェーン店もあるが、イポーやクアラルンプールで展開するオールドタウンカフェ(旧街場珈琲館)チェーンは、古風を売り物にしている。ジャランペタリンの店舗などは昔からあると勘違いする人も多いだろう。
 古くて新しいコピティアムは近年ブームのようで、クラン、 ティアラ2B通りのアマ・コピティアムは正調海南珈琲店である。二〇〇五年の開店時にはシンガポールから海南会館のメンバーが駆けつけた。コタキナバルのオーストラリア・プレイスの古い印刷所を改装し、二〇〇四年に開店した博物館コピティアムは早くも観光名所となっている。
 少なくとも華人にとって、こうしたコピティアムは、今や文化的な存在であるらしい。たとえばン・ピンホ制作の『Kopitiam』(1997)はシンガポールのテレビドラマだ。亡き父のコーヒーショップを継いだマリーは、店を改装しコピティアムと呼ぶことにした。友達のスティーブや俳優修行中のジョー、シンガポーリアンで法律家のスーザンも加わって、彼女の店は大にぎわい・・・他にも短編映画や小説など、コピティアムを舞台とした作品は少なくない。
 西海岸の都市化された町並みの中にあって、古き良きコピティアムは昔日を懐かしむ場として機能している。そして、同じく西海岸の都市を訪れることの多い観光客にとっても、憩いの場であり続けることだろう。

交流文学論

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開高健記念アジア作家講演会シリーズ(16) (大阪・東京・仙台・函館)
丁雲(ディン・ユン) 「シンガポール華人の喪失と漂流」

ジャパンファウンデーションは、作家故開高健氏のご遺族からいただいた寄付をもとに、毎年、開高健記念アジア作家講演会シリーズとして、アジア諸国から文学者をお招きし、日本各地で講演会を行なっています。

16回目となる今年度は、シンガポールの放浪作家 丁雲(ディン・ユン)氏を招き、「シンガポール華人の喪失と漂流」をテーマに開催します。
*コーディネーター:舛谷鋭(立教大学 助教授)
*入場は無料です。事前のお申し込みが必要です。
http://www.jpf.go.jp/j/culture_j/topics/kaiko/kouen16.html

日時・会場:
10月28日(土) 14:00〜16:00   大阪国際交流センター 会議室「銀杏」 
10月31日(火) 19:00〜21:00   ジャパンファウンデーション 国際会議場 
※港区赤坂1-12-32 アーク森ビル20F
「交流文学論2」受講者で来場した人は、チェックしますので舛谷まで申し出てください。
11月3日(金・祝) 14:00〜16:00 仙台文学館
11月5日(日) 14:00〜16:00   函館市中央図書館

〜中国の人々と共に価値創造するために〜
産関4年ゼミで20年来の知己、田中信彦氏にゲストスピーカー講演をお願いした。予想通り冴えた、媚びのない、そして非常に真っ当で教育的なメッセージを紡ぎ出して下さった。
以下は個人的なメモ。講演録音にない質疑についても記した。

-中国人とつきあうには
--日本人の行動は中国人からどう見えているか
-総経理=社長
-「中国人はすぐやめる」のなぜ
--日本人側の長期安定雇用の常識
--中国人側の理由
1.嫌で
2.キャリアアップのため
3.リスクヘッジのため?
-転職社会でない日本、特に製造業
-中国キャリア双六
学校->留学->会社->充電?期間->独立->会社->独立->成功!
-自分が信じる道を泳ぎ渡って行く
-ホワイトカラーの流動性とブルーカラーの保守性
-長期在職は短期在職の連続の結果
-個人と組織は互いに短期的視野で'選び合う'関係
-中国の雇用契約は1年単位
--日本の無期限雇用=終身雇用
-人に自分の運命を左右されず、やりたいことをする、という志向
--必要なのは多少のお金と手に職
-利害関係の分散化、リスクヘッジ
--副業でなく、第一職業、第二職業、第三職業...という感覚
-日本人の「安定」はお互い他の選択肢を排除した1対1の関係
--株は持ち合い
-中国人の「安定」はマーケット市場主義
--株は公開
-豪華客船か太平洋ひとりぼっちのヨットか
--沈むと思っているかどうか
-アヘン戦争以来、150年の不安定、近15年ようやくの国家安定
-中国で日本の企業文化を思い知る
--個人より集団
--独走すれば批判「誰の許しを得て...」
-わかりにくさを自覚することが必要
-会社のことは語れるが、自分のことは語れない日本人
-中国は個人とその仲間が単位
-自分がどんな人間なのかという明確なメッセージの発信
-世界、特にアジアで相対的に巨大な日本企業は、これまで成功体験の連続で、実は伝えるべき内容を豊富に持っている
--伝えよう、相手にわからせようというマインドがあるかどうか
-中国は個人対個人の結びつきを求めている社会=コネ社会の実態
-優秀な人の周りに優秀な人が集まると言う当たり前の現象
-この仕事の...
--社会的意義
--あなたの人生にとっての意義
--わたしの人生にとっての意義
-中国進出とは新しい付加価値を分け合う場である
-個人として生きる
質疑:
-中国進出日系人材企業は?
--まだ日系企業対象が多いが、中国企業(2000社程度か)対象にするところまで行けるかどうか
-個より経済合理性ではないか、アメリカタイプ?
--中国の個はアメリカ等キリスト教文化圏と異なる
--実は集団の力発揮することも...共産党など
-中国進出外資間の競争の中で日系企業は何を打ち出すか?
--日本型経営による、長期雇用、人材育成などで価値をアピール
--二番手の人材は吸引可能
--日本から人事のプロを赴任させよ
-中国人の出世観とは?
--どの組織かより、誰の元で働くか
--リーダーにとっては人を引きつけるためのアピールが不可欠
-日本型経営への興味は?
--急成長中国のアキレス腱、中間管理職の弱さを克服するための処方箋か
--外資依存はさながら植民地

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