立教大学は都内池袋と埼玉県新座にキャンパスを持つ学生数1万8千人弱の私立大学である。従来、「都市型の中規模大学」や「リベラルアーツの学校」を自負してきたが、近10年の学部増により、規模の点では「大規模大学」を目前にしつつある。留学生としては正規課程で学ぶ349名の正規留学生と、主に協定校からの交換留学生である57名の特別外国人学生が学んでいる。(いずれも2007年5月の数値。以下同様)留学生数は東京六大学の中では法政大学とともに少ない方で、早慶東大など学部より大学院の留学生が多い大学と異なり、リベラルアーツ(教養教育)を標榜する通り、学部生と院生の比率がほぼ2対1となっている。
1993年の「留学生受け入れ10万人計画」から25年、2003年にようやく日本への留学生は10万人を突破した。本学でも、正規留学生は1997年(120名)から2007年(349名)までの10年間でほぼ右肩上がりで3倍に増えている。なお、政府は2007年「アジア・ゲートウェイ構想」の中で、今後優秀な留学生を世界の5%程度(35万人)まで拡大することを表明している。
本学の留学生受け入れ状況をひもとくと、二十一世紀以降にいくつかのターニングポイントがある。一つは2001年度から始まった、経済支援による留学生確保のための授業料減免策である。これは留学生本人の申請によって、一律35%の授業料減免を行うもので、結果として留学生の学費絶対額は文系でおおよそ50万円前後となり、同レベル私大の中で優位を保てる。なお、授業料一律減免については青山学院、法政、明治、慶応、中央や同志社、関西、関西学院などが30%の比率で行っている
国内の18歳人口減少対策の一環として、本学では2002年度からビジネスデザイン、21世紀社会デザイン、異文化コミュニケーションの三つの独立研究科を開設したが、中でも2年以上の実務経験者を対象としたビジネスデザイン研究科の外国人入試は人気が高く、前期、後期課程を併せた在籍者191名のうち22名が留学生であり、全学の留学生数増加の一翼を担っている。
三つ目は2003年度から、外国人留学生入試を日本留学試験(EJU)による書類選考のみとしたことが挙げられる。この試験は日本学生支援機構(JASSO)により、日本の大学等で必要とする日本語力及び基礎学力の評価を行うことを目的として行われている。本学は全国に77校ある渡日前入学許可校の一つとして、日本留学試験の得点を基準とした総合評価により、書類選考のみで合否を決めている。特に韓国、台湾、ベトナム、インドネシアなど、国外会場で試験が実施されている場合、受験者は渡日することなく入試が完結する。このように留学生にとって母国で試験を受けられるというメリットがある一方、大学側にとっても入試業務負担が軽減される。また、成績優秀者は「私費外国人留学生学習奨励費」給付の予約が受けられ、大学入学後1年ではあるが、奨励費を受給できる。なお、渡日前入試を実施している大学には、奨励費受給者数の割り当てが与えられている。
この制度を利用する学生は、本学において特に韓国人留学生に多く、ここ数年飛躍的に増加している。立教大学は国内に比べ、海外での知名度は残念ながら高いとは言えないが、韓国からの留学生は全留学生の過半数を越え、他大学で優勢な中国人留学生を抑え、留学生中でも在籍率トップである。本学は韓国の国民詩人尹東柱の母校の一つであり、延世大、高麗大など韓国の代表的な大学とも協定関係を持つが、特別な入試広報を行っているわけでもなく、立教にこれほどまでに韓国からの留学生が集まる理由は謎である。
はじめに述べた通り、立教大学はこの10年間で文、経、理、社、法のいわゆる一、二文字学部に加え、観光、コミュニティ福祉、経営、現代心理、異文化コミュニケーションといった5つもの学部を増設した。すべての学部が完成年度を迎える2011年には正規留学生だけで500人近い留学生数となることが予測される。今のところ、留学生について大学全体、また学部・研究科において定員コントロールは行っておらず、全学的な規模の拡大の中で、留学生の受け入れが喫緊の課題の一つとして意識されていくことだろう。
初出:『ふれあい』No.61,08.4.25「シリーズ・国際交流問題を考える」インナートリップ国際交流協会
コメントする