東南アジア史学会の情報化について

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 東南アジア史学会は本年11月11日に設立40年を迎えるが、今から10年前、第16期(後藤乾一会長)の55回大会時の会合でインターネットの活用が提案され、併せて情報化委員(現情報化担当理事)が新設された。最初の取り組みは1996年12月からはじまったメーリングリスト「SEAML」だったが、ほどよい投稿量と内容の豊富さで、速やかに定着したように思う。当初の目的である会員同士の議論と交流という点からすると、後者に偏ってはいるものの、従来なかった新たな「場」として順調に育ち上がった。数年前まで説明の難しかった誤配信とスパムメールの違いについても徐々に理解が得られ、2004年6月からは入会とともにメーリングリストへの登録が行われるようになり、事務局が一斉メールとしてリストを利用することも増えている。
 もちろん、学会の情報化への取り組みはメーリングリストだけではない。学会ウェブは、トップページのhtmlソース冒頭に埋め込まれた記録によると、情報化担当設置の翌年、1997年5月に開始され、その年の秋季大会終了後に公式ページとして認められている。現在、国立情報学研究所(NII)にサーバを置くウェブの内容は、学会の紹介、研究大会の案内をはじめ、メーリングリストで流れた有益な情報のウェブへの転載が、特に1998年から体系的に行われている。日本における東南アジア研究活動の記録という面から、「研究会/国際会議/研究助成などの案内」として過去の記事も保存されている。
 デジタルアーカイブはNIIの電子図書館プロジェクトなどを通じて広く知られるようになったが、学会の紙媒体である会報と会誌のうち、前者は個人情報を除いてすべてデジタル化され、NIIのサービスによって見ることができる。会誌については目次の入力に留まっているものの、すでに2004年12月に著作権規定が定まり、ネット配布に関わる公衆送信・伝達権などが会長に譲渡されることになっているので、2005年以降の会誌本文のアーカイブ化が、遠くない未来に実現することだろう。
 もう一つ、学会ウェブの内容を豊かにしているのが、東南アジア関係文献目録データベースである。会誌巻末の東南アジア関係文献目録は、その速報性から他の目録の元データにもなっている重要なものだが、これまで、大学院における徒弟制の底力によって綿々と維持されて来た。学会では情報化担当を中心に科研費研究成果公開促進費の申請を続け、1999年度と2005年度に採択され、会誌ではページ数の制限で割愛されていた書誌も含め、再チェックを経てデータベース化している。学会ウェブからはダウンロード版の配布が行われているが、オンラインデータベースとして、GeNii(NII学術コンテンツ・ポータル)の一部であるCiNii(NII論文情報ナビゲータ)から見ることができる。
 最後に、学会ウェブの一部ではあるが、あまり知られていない東南アジア関連リンク集について紹介しよう。このリンク集を含むウェブ作成、メーリングリストなど、情報化担当者の職務は日々に渡る。ところが、委員時代は各期2名ずつ指名されていたにも係わらず、この十年間で情報化に実際に関わった人員はわずか5名に過ぎない。これは、ウェブの管理が特定の技術を要すると考えられているからだ。しかし、これではあまりにも負担が集中し過ぎる。もっといろいろな人材がこの仕事を担える工夫はないものか。そうした試みの一つとしてこのリンク集は会員が自由に登録、修正できるような仕組みを採用した。CMS(サイト構築の自動化)とは言い過ぎだろうが、私は専任事務局を持たない学会が、自前でウェブを維持していくには、ブログ形式で広く知られるようになったこの類の仕組みを積極的に活用する必要があると考えている。ウェブを外注するために会費を変更した学会もあるという。この文章をここまで読み進められた方々は、ぜひリンク集にアクセスしてほしい。東南アジア研究に役立つページを集めているが、消滅したページや足りない項目を発見されることだろう。そこでぜひご自分で手を加えて欲しい。そして、ウェブ上の学会資産に情報を付け加えられたあなたが、共にこの任を負うて下さることを切に希う。

初出:『東南アジア史学会会報』84, 2006.5

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このページは、舛谷鋭が2006年7月 7日 00:23に書いたブログ記事です。

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