今さら紙の本でもないとの向きもあろうが、クアラルンプール・ジャスコのニコニコ堂で古本を漁っていると、『オリンポスの黄昏』など、日本ではとっくに手に入らなくなった文庫本を見つけてうれしくなる。日本語の新刊書店はシンガポール、マレーシアとも紀伊國屋に止めを刺すが、シンガポールではスタンフォードロードのMPHハウスなき後、洋書、現地書を含め現地最大の書店となったようだ。マレーシアKLCC店では日本語コーナーは階が違うが、そのせいかゆっくり座り読みできて、土日の子供の居場所として人気だ。
香港には旺角や銅鑼湾に「二楼(階)書店」という、賃料の手頃なビルの階上に居を構えた、個性的な書店がたくさんあってうらやましい。シンガポールだとオーチャードの外れ、タングリンショッピングセンターにそんな風情がある。ビル内の骨董屋で高価な古書や古地図を鑑賞するのもよいが、何と言ってもSelect Booksは外せない。東南アジア中の出版物が地域ごとに並ぶ様は圧巻だ。日本の書店も仕入れ元にしているほどで、一カ所選べと言われたら、私の場合ここになる。クアラルンプールだとマラヤ大からPJ門を出たユニバーシティ通り沿いの住宅街にあるGerakbudayaだろうか。この辺りはマラヤ大の先生も結構住んでいて、書店兼住宅の庭先で海外からのゲストを招き、学術サロンが開かれることもある。
東南アジアの本は、私が専門とする中国語の文献に限らず、一度印刷すると増刷、再版が稀なので、どうしても古書店に頼りたくなる。しかし、それがないのだ。ペナンのチョウラスタ市場の二階に紙屑屋と見紛う古本屋、クアラルンプールは英語のペーパーバックの交換所のようなところしか見当たらない。アンパンパークのペイレスブックスやアンコープモールのブックマートあたりだが、どうも物足りない。バンサビレッジ裏のビルの二階、Silverfish Booksにも並んではいるが、会員の閲覧用で売ってくれないようだ。東南アジア音楽のCD、東南アジア映画のVCD/DVDと併せ、探しあぐねたものの一つだ。どなたかご存知ないですか?
初出:『南国新聞』2006.11.9
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