マラヤ大の動物たち

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 モントキアラからダマンサラに抜け、クアラルンプールGCCまで来ると、道の向かいにも緑があり、こっちもゴルフ場かと早合点する。信号渋滞で路肩の椰子をながめていると、はらはらと木の葉が落ちてくる。排ガスのせいかと樹上に目をやると、猿たちが椰子の実をむしろうとしている。木の下には子猿も集まって来た。ここはマラヤ大キャンパスの西縁に当たる。クアラルンプール市内南西、3キロ平方に及ぶ校地はバンサの隣だ。テレコムビルの麓の緑はすべてキャンパス。
 私の研究室は芸術社会科学部の青屋根の三階だが、外廊下の横の木は猿たちの遊び場で、ドアを開けたとき目が合って困る。南郊外のプトラ大は元農大で緑が多く牧場さえあるが、猿はマラヤ大でしょうと言われた。学生が入寮して最初に注意されるのは、窓の鍵を閉め忘れないこと。猿が乱入して部屋を荒らされる。リゾートのバンガローの注意事項と同じだ。
 猿くらいで驚いてはいけない。学内にリンバ・イルム(智慧の森)という植物園があり、毎月第一土曜朝にガイドツアーがあるほどのジャングルだ。ここをねぐらに鳥も様々だが、飛ぶのは鳥ばかりでなく、リスが階段を駆け上がって向かいの木に飛びつく。モモンガではあるいまいし、初めは目を疑ったが最近慣れてしまった。
 キャンパスの中央には湖があり、ボート漕ぎが楽しめる。卒業式シーズンには全国から訪れる卒業生父兄のために移動遊園地が開かれるくらいだから、ボートくらい当り前かも。公園だか何だかわからなくなる。各学部、寮にはそれぞれ食堂があり、ほとんどが屋外だが、私のお気に入りはゲストハウス隣の基礎科学部の食堂。密集した竹薮をながめながらのランチは落ち着く。客が立ち去ると片付けより先に雀が群がる。カレーを食べて大丈夫なのだろうか。
 LRT駅までの学バスがエンコして、水辺の道を歩いていたときのこと。目の端に四つ足の動物が映った。野良犬はちょっと嫌だと思いつつ歩を進めたが、動物は長くてなかなか視界から消えない。はっとしてよく見ると全長1メートル以上の大トカゲ。爬虫類特有の怒り肩で悠然とからだをくねらせている。さすがにびっくりして凝視したが、湖の護岸の横穴に戻って行った。我に返ると立ち止まっているのは私だけだった。

初出:『南国新聞』2006.5.4

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ペナンのマレーシア科学大(USM)の水辺には大トカゲがうようよしていた。場所柄少なくないタイ人留学生は、Komodoと呼んでいたが、それに恥じないドラゴンぶりだった。

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このページは、舛谷鋭が2006年5月18日 14:59に書いたブログ記事です。

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