2009年4月アーカイブ

 紅色旅遊(レッド・ ツーリズム)という色を冠した中国観光をご存じだろうか?革命聖地を巡る旅をこのように呼ぶが、同様に色彩によって名付けられた観光として、農山村地域で 自然、文化、人々との交流を楽しむ「グリーン・ツーリズム」や、島や沿海部の漁村に滞在し、海辺で生活体験を楽しむ「ブルー・ツーリズム」などが知られて いる。
 どちらも「レッド・ツーリズム」同様、日中の政府主導の観光で、前者は農林水産省、後者は国土交通省が推進している。その他に も北海道の冬ならではの生活を体験する「ホワイト・ツーリズム」や、春の菜の花畑を活用した観光誘致を「イエロー・ツーリズム」と呼ぶなど、案外色彩に よって象徴された観光は存在する。
 これらをカラー・マーケティングと捉えられもしようが、戦跡など死、悲劇、暴虐にまつわる「ダーク・ツーリズム」の暗い色合いを引き合いに出すと、カラフル・ツーリズムがどのようなイメージで視角を定め、眺めるかを旅行者に強いていることがわかる。
  観光社会学においてこうした視角(Gaze)は日本語で「まなざし」、中国語で「凝視」などと訳されている。元はイギリスの社会学者ジョン・アーリによ る鍵概念だが、台湾で2007年末に中国語に訳され(国立編訳館、葉浩訳『観光客的凝視』書林)、ずっと誠品書店で平積みになっていたから、売れ筋ではあ るのだろう。アーリの種本はフランスの思想家フーコーの『臨床医学の誕生』で、湯治や海水浴の医療効果を取り上げている当たりはお里が知れる。
 様々なカラフル・ツーリズムは総合旅行社、航空会社、国際ホテルチェーンなどが仕掛ける従来型の大人数向け「マス・ツーリズム」との対照で「ニッチ・ ツーリズム」と捉えることも可能だろう。こうしたアクティブな旅行者は体験型を嗜好するのだ。色眼鏡ということばがあるが、カラフル・ツーリズムは観光地 がそれとして印象を与えるのでなく、観光客が先入観によって印象を引き出していることを教えてくれる。
 青色照明効果を引き合いに出 し、認知心理学の「スキーマ」(図式)と言えばよりはっきりするだろうか。私の周りの大学生で、色彩検定に興味を持つ人が世界遺産検定と同じくらい居るこ とを考えると、あらゆるモノには「色」があるということを、思ったより多くの人が認識しているのかもしれない。

サーチナ連載

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ウェブコラムの連載を引き受けた。定期的な執筆はアジアクラブマンスリーの「サイバーアジア」、南国新聞の「マレーシアつれづれ滞在記」以来だ。はじめ隔週で依頼を受けたが経験のある月刊にしてもらった。サーチナという中国情報ポータルのコラムで、ヤフーニュースに転載されることもあると言う。華僑華人研究で目にとまったようだが、折角なので観光のことも書こうと思い、「アジアへの旅」というどんな話しでも盛り込める連載タイトルにした。ブログ形式でログイン、投稿する方法だが、掲載イメージがすぐ表示され、校正も比較的しやすい。自分のブログへの掲載は許可されているので、折を見てこちらにも転載したい。

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