2009年7月アーカイブ

 2004年初め、中華人民共和国建国55周年・長征70周年の年に河南省鄭州市で開催された全国旅遊(観光)工作会議において、紅色旅遊(レッド・ツーリズム) についての「鄭州宣言」が採択される。正式名称は七省市発展紅色旅遊鄭州宣言で、七省市には江西、北京、上海、河北、福建、広東、山西が含まれる。
 同年12月、中国共産党中央弁公庁と国務院弁公庁が「紅色旅遊発展企劃綱要」を発表する。「綱要」によると、レッド・ツーリズムの目的は愛国主義と革命伝統を広く教育し、民族精神を発揚、育成、民族の団結力を強化して革命老区の経済と社会を協調、発展させることである。革命老区とは1920〜40年代に かけて中国共産党が建設した革命根拠地で、辺鄙で人目につきにくい農村であり今も経済、交通面で遅れが見られる湖南、湖北、江西、安徽、河南、四川、陝西、河北、山西などの地域を指す。
 レッド・ツーリズムとは、主に中国共産党指導者と庶民の革命期・戦時期の功績にまつわる場所や事物を通じ、革命史・革命遺産と革命精神を観光資源として 組織的に旅行者を受け入れ、それらを偲ぶ旅をテーマとする観光を言う。こうした観光は愛国主義教育、歴史文化遺産の保護、革命老区の経済発展および新たな観光開発に役立つという。
 レッド・ツーリズムの六つの目標は、観光客の増加(具体的には「綱要」前期の2004年から2007年までは15%程度、後期の2008年から2010年までは18%程度が目標数値)、12の「重点紅色旅遊区」の形成、30のモデルコースの定着、100大紅色観光地の建設と革命歴史遺産の整備・保護および革命老区の経済発展である。
 12の「重点紅色旅遊区」とは、上海を中心とする滬浙紅色旅遊区、韶山・井岡山・瑞金などの湘カンミン紅色旅遊区、百色地区中心の左右江紅色旅遊区、遵義中心の黔北黔西紅色旅遊区、ティエン北・川西などの雪山草地紅色旅遊区、延安中心の陝甘寧紅色旅遊区、松花江・鴨緑江流域・長白山などの東北紅色旅遊 区、皖南・蘇北・魯西南などの魯蘇皖紅色旅遊区、鄂豫皖交界地域中心の大別山紅色旅遊区、山西・河北などの太行紅色旅遊区、渝中・川東北などの川陝渝紅色 旅遊区、北京・天津などの京津冀紅色旅遊区。
 30のモデルコースとは、北京−遵化−楽亭−天津、貴陽−凱里−鎮遠−黎平−通道−桂林、昆明−会理−攀枝花−冕寧−西昌、蘭州−定西−会寧−静寧−六 盤山−銀川、西安−洛川−延安−子長−楡林−綏徳、黄山−ウ源−上饒−弋陽−武夷山、哈爾濱−阿城−尚志−海林−牡丹江、海口−文昌−瓊海−五指山など。
 具体的には、1921年の中国共産党設立当時、土地革命戦争期(1927−37)、長征期(1934−36)、日中戦争期(1937−45)、国共内戦 期(1945−49)、愛国統一戦線(1949−)それぞれの時代の歴史や、古参党員・戦没者などの革命烈士についての事跡が観光対象となる。
 「綱要」が発表された2004年末以降、ガイドブックを中心に中国旅遊出版社、現代出版社などから50冊以上の関連書籍が出版され、その中ではおおむね前述した12の「重点紅色旅遊区」に沿って革命聖地が紹介されている。

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