2008年10月アーカイブ

第80回東南アジア学会研究大会シンポジウム
2008年11月30日,東京大学駒場キャンパス

9:30-9:35 趣旨説明
青山 亨 (東京外国語大学)

9:35-10:05 発表1
インドネシア:「文学コミュニティ」から見える文学実践の多様化
澤井志保 (東京外国語大学大学院/香港中文大学大学院)

10:05-10:35 発表2
マレーシア:多民族社会の中の華人文学
舛谷 鋭 (立教大学)

10:35-11:05 発表3
ベトナム:ファム・コン・ティエンの詩学
野平宗弘 (廈門大学外文学院)

11:05-11:20 休憩

11:20-11:50 発表4
タイ:タイ現代文学の登場と新ジャンルの挑戦
アット・ブンナーク (タイ中小企業開発銀行)

11:50-12:20 発表5
カンボジア:内戦終結後からの再出発
岡田知子 (東京外国語大学)

12:20-13:30 昼食休憩
13:30-14:30 会員総会

14:45-15:00 コメント1
小野正嗣 (明治学院大学)

15:00-15:15 コメント2
押川典昭 (大東文化大学)

15:15-16:15 総合討論


趣旨説明

東南アジア研究の歴史を振り返ってみたとき、文学の研究は、その一角において、もっとも大きな流れでこそなかったかもしれないが、確固たる位置を占めてきた。東南アジア研究における文学研究は、文学固有の問題群を分析する試みであったばかりではなく、文学を通して東南アジアの社会を理解するための探求の試みでもあった。けだし文学は社会的な存在である人間の創造物であり、言語というコードの共有と読み手の存在を前提とする以上、これは当然のことであろう。インドネシアの作家プラムディヤは、文学の理解は人間の理解である、と述べているが、まさに東南アジアの文学研究は、文学を通じて東南アジアの社会、そこに生を営む人々を理解しようと努めてきたのである。
このことは、社会の変化に応じて文学、そして文学の理解もまた変化していくことを意味している。20世紀において、東南アジアの多くの地域が列強の植民地支配のもとにあったころ、あるいは、第二次大戦後に独立を達成し国民国家の建設に全力を尽くしていたころ、あるいは、東西冷戦を背景にした戦乱の渦中にあったころ、文学が文学としての使命に真剣に向け合おうとすればするほど(そのことと作品の価値とは別のものであるし、作品がどのように表現されるかは個々の文学者の意識に委ねられるものであるが)、作品には、近代化、国民統合、抗戦といったその時代の社会的なプロジェクトの潮流が直接的あるいは間接的に反映することとなった。対する文学の研究もまた、文学作品の研究を通じて、社会の有りようとその来るべき変化の方向を読み取ろうとしてきた。
今日、おおよそ1990年を境として、東南アジアの多くの地域において新しい社会的、政治的な変化が生じつつあることは、否定できないであろう。ベトナムにおけるドイモイ政策の開始、マレーシアのペトロナス・ツインタワーに象徴される経済発展、アジア金融危機に端を発するインドネシアのスハルト政権の崩壊とそれに続く民主改革は、これらの変化を示す代表的なできごとである。これらの動きを端的に言いあらわせば、冷戦的イデオロギー対立の衰退、市場経済の進展と都市中間層の台頭、本格的なグローバル化による人、もの、情報の過剰なまでの越境、に集約できよう。
社会の新しい動きに呼応して、東南アジアの文学のなかには、内容あるいは形式においてこれまでの文学とは一線を画す動きが現れつつあるようである。むろん、具体的な作品のあり方は、それぞれの地域固有の力学によって、あるいは、文学者の意思によって、多様な形をとることになろう。しかし、にもかわらず、そこには今までにない胎動が通底していることを感じることができる。また、過去の文学に対しても、新しい視点から読み直されることによって、新たな評価が下される動きも生じている。このような東南アジアの今を前にしたとき、東南アジア文学の研究者には、21世紀にふさわしい新しいアプローチが要請される。
このシンポジウムでは、東南アジア文学の今を取り上げ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、タイ、カンボジアの文学の研究者に報告をしていただくとともに、東南アジア地域の文学の立場からと、地域を離れた文学の立場からそれぞれコメントをしていただくことによって、東南アジアの文学の今を考えていくことを狙いとしている。聴衆の皆様にも東南アジアの文学の今を感じていただければ幸いである。

日時: 10月10日(金)4限(14:50-16:20)
場所: N212教室

内容:
8月中にペナン、クアラルンプールでフィールドを行った観光学部一年生2班から3グループが報告し、質疑を受けます。

連絡先: 観光学部舛谷研究室

※※来聴歓迎※※

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