2007年4月アーカイブ

 マレーシアから日本に帰国して、親の赴任につきあった子供たちに聞いてみると、うちの場合はあまり芳しい印象は返ってこない。何年も居ればいろいろわかるのだろうが、一年ではまだまだ日本に後ろ髪を引かれっぱなし。しかし、日本人学校のイーシー(英会話)の授業はいまだ記憶が鮮やかなようだ。
 小学部の英語活動は歌やゲームを通して英語に親しむイマージョン・ミュージック、英語で水泳指導をうけるイマージョン・スイミング、それにイーシーだが、最初から衝撃的な体験だったらしい。まず、配られたプリントのどこに名前を書くかわからない。両親のどちらかが英語話者だったり、アマさんと英語で話したり、家庭環境で英語がわかる生徒も少なくないが、能力別クラスだから助けてくれる人はいない。ローカルの先生は日本語がわからない。ぐずぐずしていると「ハヤク」と言われる。「チョウかんたん」と追い打ちをかける。当たれば「ヤッタ〜」と喜んでくれる。これら3ワード以外、ことばも教材もすべて英語だ。
 第二言語習得研究によると、日本人は新しい言語に接触した場合、話し出す前の「沈黙の期間」が長い傾向にある。実際に他の人と言葉を交わすことなく、独り言の段階で終わるケースも多い。それでは新しい言語、特に英語に関心がないかと言うと、もちろんそんなことはない。国際化=英語という消しても消しても現れる図式はおなじみだろう。一時期流行った「欧米か?」というツッコミも非常に日本的だったのかもしれない。
 日本国内では金髪碧眼を条件に講師を募集して問題になった英会話学校があったが、上の図式に国際化=英語=米英とつけ加えてもよいだろう。実際にはアメリカでもイギリスでも、多文化社会でないわけないのだが、少なくとも日本では多民族の共通語としての第三言語(たとえば英語)という状況は起こりにくい。
 日本と同様に言語、民族が単方向に収斂されている韓国から、マレーシアのインターナショナルスクールに通わせるケースが急激に増えているという。経済的なことばかりでなく、ついでに中国語というのもマレーシアを選ぶ理由らしい。過剰な教育熱の現実的選択の現れか。しかし、親にも負担のかかるインターでなくとも、日本人学校のイーシーと子供たちが英語を使う環境さえあれば、それがちょっとした買い物やコンドのプールの小競り合いでも効果はある。日本語以外のことばでしゃべって、通じて、答えが返って来たという経験は、帰国してからこそじわじわ効いてくるのだ。

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