第23回「東南アジアの社会と文化」研究会のお知らせ
第23回「東南アジアの社会と文化」研究会のお知らせ
第23回定例研究会を下記の通り開催します。今回は、京都大学
大学院の王柳蘭さんが、雲南系華人のタイへの移住とネットワーク形
成について報告します。多くの方の参加をお待ちしています。研究
会終了後、懇親会を行いますので、こちらにも振るってご参加下さい。
なお、今回は(前回に続き)事情により開催が第四金曜日になってい
ます。ご了承ください。
話題提供者:王柳蘭(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
移住経験と「華」人の動態的理解にむけて
—タイ北部における雲南系漢人と雲南系回民の
移住とネットワークの形成から—
日 時 :2005年5月27日(金) 16:00−18:00
場 所 :京都大学東南アジア研究所 東棟2F教室
中国からタイに移住してきた中国人については、これまで海路華人移住
者(Overseas Chinese)が主流とされ研究蓄積がなされてきた。しかしな
がら、タイ北部国境からビルマ、さらに雲南に目を向けると、そこには陸路
を通じて歴史的に移住と定着を繰り返してきた陸路華人移住者(Overland
Chinese)の姿がある。彼らは「雲南人」と自称している。
現在、北タイ国境には約70箇所以上の雲南人集落があると言われてい
る。本発表では、これら国境地帯に住む「雲南人」が、タイに定着していく
過程でどのように"われわれ"集団を形成しつつあるのか、彼らの移動と
定着の歴史的過程ならびに、今日におけるネットワークの展開から浮き
彫りにしていく。
具体的には、第1に、タイにおける雲南人集落について、文献資料と聞き
取り調査によって得られたデータをもとに、20世紀前半から20世紀後半に
かけて集落が形成されてきた歴史的経緯とその諸段階を示す。第2に、
「雲南人」を構成するサブ・グループである雲南系漢人と雲南系回民(ムス
リム)のそれぞれについて、彼らの移住と定着の過程について、口承史か
ら得られた資料にもとづき、微視的に集団の生成過程をみていく。第3に、
彼らがタイに定着していく過程で、タイ国家のなかで周縁化されていきな
がらも、これら両グループがいかに社会関係を構築し、国境を越えたネッ
トワークの展開を図っているのかについて述べる。
最後に、雲南系漢人と雲南系回民が北タイという移住の最前線において、
国家や地域間関係に影響を受けながら、いかに「華人」集団形成に向け
て葛藤と揺らぎを抱えているのかという点について、雲南からタイへの
移住の経験にもとづいて考察を試みる。