立教大学観光学部 舛谷研究室 masutani lab, tourism, rikkyo

5つ星ホテルに安く泊まるには

学生のうちにリッツのバトラーサービスを経験できる人は少ないだろう。しかし、何事も自分の体験が一番勉強になる。そこで、為替換算でツインシェア一人分1万円台で泊まれるクアラルンプールを薦めることが多い。これは実感であって、アジアのホテルの客室単価を比べたわけではない。よくあるホテルサービスでなく、料金の国際比較があればと常々思っていた。

似たようなリストにトリップアドバイザーの「世界主要都市のタクシー料金」がある。日本の高さが際立ち、シンガポールが意外に健闘しているのがわかる。マレーシア、インドネシアはないが、この順で右に(長く)行けるだろう。

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昨年日本にも参入したドイツのオンライン旅行会社ホテル・リザベーション・サービス(HRS)の"Annual Hotel Price Radar"によると、禁酒法など、何かとシンガポールのお手本になっているオーストラリアの二都市が250シンガポールドル超、シンガポール、香港がそれに続く。この調査は現地メディアでは「シンガポールのホテルはアジアで三番目に高い」という記事になったが、逆に安いのは、バンコク、バンガロール、ジャカルタなど。ソウルが意外に健闘し、クアラルンプールが上海より高いというのが実感と異なる。

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私の実感とは、設備、サービスともグローバルな5つ星の体験にどのくらいの対価を払うかという比較。冒頭のリッツカールトンで言えば、東京75,800円(864SGD)、シンガポール460SGD、ソウル340,000Won(416SGD)、クアラルンプール500RM(189SGD)の順で実感にそぐう(ザ・リッツ公式、15/4/15デラックス想定)。

シンガポールではベンツが売れる

シンガポールは自動車購入抑制に約100%の税金とCOE(新車購入権)の公開入札を課している。前者はすべて外車なので逃げ道なく、後者は1990年からで排気量によるが、Aカテゴリー(1.6リットル以下乗用車)で600万円超に高騰しているらしい(JETRO 2014)。日本で200万の国産車は200+200+400で約1000万。そういう事情で新車登録に大衆車は存在せず高級車が占め、2013年はベンツ、BMW、トヨタがトップ3。先ごろ発表された2014年はトヨタ、ベンツ、BMWと57%伸びたトヨタが20%伸びのベンツを逆転している。その他、この一年間で伸びが大きいのはなぜか日本車。5位のマツダが210%、6位の日産が194%、8位のホンダが264%伸びている。以上、シンガポール陸上交通局(Land Transport Authority)調べでした。

Disqusコメントシステム

重いWPがいやだったから、などと言いつつ、いじっているうちNibbleblogのテーマ(Simpler2)が対応しているのを見つけ、Disqusコメントシステムを付けてしまった。シンガポールのHDBではFacebook見るのもたいへんなほど遅いSingtelのデータプランでポケットWifiだが、何とか3秒くらいで表示してくれている。SNSアカウントでログインしてシェアしたり、いいねを付けたりソートしたり、画像アップもできる。一部にはブログ復権の切り札、などと言う向きもあるが、いずれブログ記事へのコメントを学生の課題とし、掲示板のような使い方を試してみたい。

EPUBを読む

ゼミの報告書を電子書籍で作成し始めたが、PDFよりEPUBの方が大きさが1/5ほども小さくなったので、今後配布メインにしようと思う。ということで、受け取ったEPUBの読み方をゼミのFAQに電子書籍のページをつくってまとめた。

パソコンで読めるソフトで意外によいものが少なかった。今日Kindle for PC日本語版が出たようだが、少し様子をみてよければ加えたい。

シンガポールの禁酒法

2013年12月8日のリトルインディア暴動以来、轢かれたインド人が酔漢だったこともあり、今年3月までリトルインディアでは大々的な飲酒規制が時限的に敷かれていた。4月以降どうするか、オーストラリアの野外飲酒禁止事例の見学に政府関係者が赴いたりしていたので、更に規制をかけるだろうと思っていたが、このほど4月以降の恒久的な新法が発表された。

禁酒時間と場所は、1.夜10時半から朝7時まで全島で酒類店頭販売禁止、公共の場で飲酒禁止。2.飲食店は店内のみ酒類提供可で店頭販売不可。3.ゲイランとリトルインディア周辺にそれぞれ禁酒エリアを設け、平日はもちろん、週末、休前日の夜間(夜8時から朝6時)酒類店頭販売禁止。4.夜10時半以降、公園やコンドのバーベキューピット(プールサイドは除く)などで飲酒する場合は事前に届け出、とのことだ。

その後通産大臣が「過去3年間、週に平均1度は飲酒に関わる事件が、平均2度は傷害が発生している」と発言。これらは増加傾向にあり「公共秩序を守るため、法案が必要」と強調。

一番経済的なダメージを受けそうなのはセブンイレブンなどのコンビニだが、賛成文書を提出させられたよう。あくまで新聞報道によるが、業界団体も1年間は試行期間で、との声明を出すのが精いっぱい。

罰金の最高額も販売店に対してはこれまでの5000ドルから1万ドルになり、禁酒エリアでは3万ドル。個人に対しては初犯1000ドル、再犯以降2000ドルと禁固3ヶ月以内。

観光客にとって、ますます安全な国になるに違いない。

参考: Liquor Control Bill

 

その後大使館から以下の緊急一斉通報(15/3/4)が来た。コンド内のバーベキュー場が公共の場所か否かは、第三者が自由に出入りできるかという判断基準なので、ケースバイケースのように思う。原文と事例を研究したい。

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酒類規制法の施行について(注意喚起)

2015年1月の議会で酒類規制法案が可決され、2015年4月1日から
施行予定です。シンガポール内務省の発表に基づき同法律の内容や
予想される違反形態を以下にまとめました。


1 2015年4月1日から、シンガポール国内の「公共の場」における、午後
10時30分から午前7時までの飲酒が法律(酒類規制法)で禁止されます。
法律に違反した場合、最高1,000シンガポールドルの罰金が科され、
再犯の場合、最高2,000シンガポールドルの罰金又は最高3ヶ月の禁固刑に
処せられます。また、同時間帯の酒類の小売販売も禁止され、コンビニエンス・
ストアやスーパーマーケットでの酒の購入ができなくなります。

2 飲酒が禁止される「公共の場」とは、主として駅、道路、歩道、公園、広場等、
出入りが自由な場所が想定されており、私的な空間である自宅やホテルの部屋、
あるいは、コンドミニアム敷地内のバーベキュー場は屋外であっても「公共の場」には
含まれず、法律上、夜間の飲酒は認められます。

3 午後10時30分以降であっても、政府から酒類提供の許可を得たバー、レストラン、
ホーカー、カフェ、イベント会場等においては、許可で認められた時刻まで酒を飲むことは
可能です。ただし、提供を受けた場所で飲むことが条件であり、同所から別の場所に
持ち出したり、自宅やホテルに持ち帰ることは禁止されます。


◎想定される違反例1
午後10時30分より前にコンビニエンス・ストア等で酒を購入し、午後10時30分過ぎに
歩道上のベンチ等、公共の場で飲酒。

◎想定される違反例2
自宅でパーティーを開催し、午後10時30分過ぎ、酒が足りなくなったため、酒を販売(提供)
しているホーカーやカフェに行き、酒を購入し、同所で消費することなく、自宅へ持ち帰る。

トラベルライティングアワード ショートリスト2014

プロジェクト学生らが2013年分の機内誌を読み終え、今年度のトラベルライティングアワードのショートリストが発表された。この後、全ゼミ生が目を通し、投票でアワード作品が決まるのが楽しみだ。

  • 武沢慶浩「パラオ:伝説と大自然が残る島へ」10p SKYWARD 13.5
  • 簇智優子「ベルギーの甘~い生活:美味しいチョコレートが紡ぐ笑顔と幸せ」12p SKYWARD 13.12
  • 真木三和子「客船で見る夢(地中海クルーズの旅)」13p SKYWARD 13.1
  • 岡田カーヤ「ハノイのお米百変化」18p 翼の王国 13.7
  • 村岡俊也「ヨセミテの短い秋]24p 翼の王国 13.2
  • 石川光則「中国箱庭鉄道 乗ったり降りたり歩いたり:四川「芭石鉄路」訪問記」17p 翼の王国 13.9

Romancerでつくった合宿報告書

今年度の報告書電子版を一斉リリースした。国際ブックフェアで見た古いつきあいのVoyager、Romancerで作ってみた。学生は圧倒的に携帯で見るケースが多いだろうが、タブレットもよいだろう。印刷メニューないが、今後試行錯誤しながら報告書のプラットフォームを考えていきたい。

nibbleblog

WPがあまりに重いので、乗り換え先をさがしていました。ブログ派生でないgbEasyも考え、インストールして検証もしましたが、日本語インストーラあるものの、全部ウィキにしてしまっても大差ない感じがして、ブログ派生の軽いCMSであるこのNibbleblogにしました。現時点で日本で唯一まとまった情報を掲載しているCMSWAVEさんの記事を参考にさせていただきました。グーグルで両方検索したら、nb3万件以上、ge1万件未満だったので、英語の情報はあるのではないかと思っています。後は元のWPの数百件の記事を取捨選択しながら転載しようと思います。

ゼミプロジェクト(サブゼミ)の記録

第三回ゼミ総会(2014.5)配布資料です。ドレスコード民族衣装で、こんな感じでした。

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 前回のゼミ総会配布資料「ゼミ合宿の記録」で、「舛谷ゼミは合宿とサブゼミ(プロジェクト)と卒論でできている、と言っても過言ではない。」と書いた。教授昇格時の第一回(2008.5.17)、10期生記念の第二回(2012.5.26)、齢五十を迎え、立教在籍予定三十年間の折り返し、ちょうど十五年目の今回まで、その気持ちは変わっていない。
 そもそも「プロジェクト」とは何か? 何かをやり遂げてほしいという機能への願いを込めて、一貫して「サブゼミ」という形式的な呼称を使って来なかった。元は私が知りたいこと、掘り下げたいことをテーマにして、一緒に探求する目的だったが、現在は同期による横の学びと平行し、学年通したピアサポートの場として位置づけている。何と言っても、教えることは学ぶこと、なのだ!
 サブゼミリーダーが活動の過程で意識を高め、ゼミ長をサポートし、ゼミ運営を円滑化する効果がある一方、主に昼休みに行われるランチミーティングの頻度が高く、私の最も嫌う「やらされてる感」が漂ってしまうのが今後の課題である。効果的な進め方について、現役、OBでぜひ意見交換してほしい。
 なお、以下の記述は過去wikiウェブを確認しながら記憶で書いているので、補足訂正すべき箇所はぜひ教えてもらいたい。

ICT
元ITプロジェクト。サイバーラーニングを担当する舛谷ゼミのキープロジェクトで、ここのリーダーがゼミ長になることが比較的多かった。社会学部でゼミをはじめたとき、メディアセンターの役職をしていて、IIJやドコモなど、立教出入りのIT企業との産学連携を進めたいという気持ちがあった。アキバフィールドワークで2万円パソコン(100ドルPC:OLPCのつもりだった)を購入貸与し、Linux OS(近年はUbuntu)をクリーンインストールしてもらうのが常だった。10からタブレットに移行し、直近の13では電子書籍端末を強調した。デバイス目当てを避けるため、ITパスポート取得や仮想サーバ構築など、様々なタスクを課している。09の使い残しゼミ費に補充し、「ゼミ生がICTについての見分を広め、教養を高めることを援助するため、経済的援助を与えることを目的とする」ICT援助金を設立し、自己申告で資格や機器など何でも、半額5000円上限まで補助している。この基金への寄付を歓迎する。

観光まちづくり
元エスニックタウンプロジェクト。担当者の専門(華僑研究)を踏まえ、チャイナタウンをはじめとするエスニックタウンの探訪を目的としたが、色々なところに行きたくなったので、どこでも行けるよう「観光まちづくり」を行う現場へのフィールドワークに拡張した。毎年6月に行われる屋形船は、定番化した人気企画である。08から自主企画ではじまった山手線徒歩一周の運営も、定例化に伴い行っている。各地で行われるボランティアガイド等、見に行きたい場所はたくさんあるが、魅力的なフィールドを見つけたときは、ぜひ教えてほしい。
なお、10から活動実態が似通ってしまった、まなざし観光(旧なつかしい論+エキゾチック論)を合併吸収している。観光のまなざしの二つの代表例、なつかしいとエキゾチックは自己と他者の裏表であるという一応の結論を出し、アーリ『観光のまなざし』未訳の第三版の定義の翻訳もしてもらい、惜しむ向きもあったが、役割を終えたと考えている。

メディア・ツーリズム
元エスニックメディアプロジェクト。これも担当者の専門を踏まえ、多民族社会における少数民族語メディア(エスニックメディア)を対象としたが、日本だと中国語など日本語以外になってしまうので、観光資料ともなる海外の日本語メディアも対象にしていた。マスコミはじめ、メディア研究への関心、そして近年のアニメ聖地巡礼等のコンテンツツーリズムの展開に応じて10から改称した。フィールドワークも聖地巡礼すればよいので、やりやすくなった。

トラベルライティング
毎年トラベルライティングアワードを選定し、勝手に表彰している。はじめたときから、これはゼミがなくなっても続くだろうと自惚れた企画。すべてのトラベルライティング(旅エッセイ)を対象にするのは難しいので、「日本語機内誌」という限定を設けた。毎年JTB旅の図書館や立教新座図書館所蔵の機内誌を読み、候補作をしぼって全ゼミ生の投票で決めている。経年広報の効果で、研究室に寄贈される機内誌も増え、まだ観光マスコミに限定されるが、学外の関心も高まっている。11からプレスリリースを打ち、授賞式(受賞者欠席なら発表会)を開催している。

日本とアジア
04発議で唯一の学生発プロジェクト。流行語大賞2013で候補50に残るほど一般的になったダークツーリズム(死、悲劇、暴虐など負の遺産を観る)を中心に、日本ならではの災害跡地や公害からの環境回復を対象にしている。東日本大震災後の現在、広く注目されているが、個人の研究課題としては、本来の定義である戦跡観光を中心に考えている。学生プロジェクトの方は、広く関心の趣くままに進めてほしい。靖国を含む皇居周辺見学等、フィールドワークを重ねて練り上げたコースもある。

グローバルスタンダード
当初の意図はインターネットの標準規格であるRFC やISOなどの国際標準化を対象とする目論見だったが、青木保の文章(『憩いのロビーで』所収)にあった「もしグローバルなスタンダードというものがあるとしたら、国際的なチェーンホテルの出現はそれを端的に示すことだと思う。」を踏襲したソフトパワー論に移行し、ホテルチェーンやファッション、ブランドなど、グローバルな消費文化の魅力の源泉を探ってもらっている。
自主企画ではじまった富士登山の定例化に伴い、「世界遺産」というグローバルスタンダードを対象に加えている。

ホームステイ
2004年から行っていたブルネイ合宿は主にイスラム家庭ホームステイだが、現地の評判がよく、毎年来られないかと要望があり、07でゼミ合宿からスピンアウトさせ自主企画で毎年実施にし、08からは新設ホームステイプロジェクトに運営を移管し、私が行かなくてもできる体制を整えた。その後、学部間協定校のマラヤ大やモンゴル国立大など、立教訪問プログラムに際し、主に土日一泊のホームステイ受入れがはじまり、送り出しと受入れの両面から、ホームステイを検討することができるようになった。ペナンやバリなど送り出しに困ったことはないが、日本側の受入れは常に不足しているので、ぜひOBにも協力をお願いしたい。地元志木ロータリークラブの日豪相互ホームステイなど、外部から協力を要請されることもある。

 こうして見ると、プロジェクトの内容が各自の卒論テーマにつながったり、就職に影響したりしているケースも散見される。しかし、プロジェクトは生き物である。今後も生没流転を繰り返して行くのを、むしろ楽しみにしている。

 さて、末筆ながら私の五十天命である。大学の仕事には、研究、教育、学務という三種類がある。学務で便利に使われているのはご存知の通りだが、もちろんこれではない。この会場には全ゼミ生の半分近くの教え子が居るが、全員と顔見知りなのは私一人である。研究も大事だが、やはり私は教育だと思う。
 この9月からその名も「研究休暇」をいただき、一年間、シンガポールの南洋理工大人文社会科学部で教えることになった。この経験が今後の教育をパワーアップさせることを目指したい。皆さんリピーターかもしれないが、新たなシンガポールの魅力を探し、この間に縁あって訪れる方がいれば、ぜひ現地でお伝えしたい。とはいえ、ずっと日本を離れているわけでなく、MOOC(大規模オープンオンライン講座)の一環であるgacco.orgで科目も担当し、一時帰国しての反転学習(スクーリング)も予定している。
 次回総会は私が勤続20年で立教校友の権利を得る2016年度あたりだが、今回初めて現役学年(しかも就活中)の手を煩わせたが、初回03、二回目07に続き、次回運営してくれるという学年があれば歓迎する。

卒業論文の記録―第四回ゼミ総会に寄せて―

前々回の総会配布資料で、
「舛谷ゼミ(社会学部産業関係学科1999-2005/観光学部交流文化学科 2006-)は合宿とサブゼミ(プロジェクト)と卒論でできている、と言っても過言ではない。」
と書いた。合宿とプロジェクトについては前回、前々回に配布資料としたので、今回いよいよ卒論について触れてみたい。
 必修でもない卒論に向き合い、何万字も書き綴るのはたいへんなことだ。しかし、これは各自がテーマを持って大学生活を過ごすことへの注意喚起に過ぎない。寝ても醒めても考え続けられるようなテーマを持っているのは一部の人かもしれない。それでも、各人がこれと決めたテーマを持ち続けることで、日々様々な気づきが生まれ、学びのコアにしてもらうことを、どうしてもあきらめられない。1年生の4月の前のめりに学ぼうとする新鮮な姿勢は日々失われ、4年になる頃には、すっかり慣れ切った「日本の大学生」ができあがっているせいもある。
 卒業前に何とか好奇心と向学心を取り戻して欲しい、恩師と呼んでもらえるなら、勉学の指導とその証を残しておきたい、そんな思いもある。卒業後に、もっと勉強しておけばよかったと言う人は多い。その現れの一つとして、卒論を書いておいてよかったと言う人も少なくない。残した結果が大事ではなく、書けても書けなくてもプロセスが大切なのだ。先行研究をさがし、合宿やゼミ中に報告し、何とかでっち上げて事務〆切に間にあわせ、観光学部ではその後レジュメを作成し、報告会で他ゼミや教員の前でプレゼンし、最後にゼミ独自の報告書を仕上げる。どの段階でギブアップしても、何か残るものはあったと信じたい。いつも言うことだが、瞬間的にでも日本一そのテーマについて知っている、と自負できるくらい突き詰めてほしい。事実、書き上げた時点ではそうしたレベルに到達していた卒論もないことはない。今回改めてすべての卒論報告書を見直し、贔屓目ながらそうした思いを強くした。
 巻末に一覧を付したが、123本の卒論・ゼミ論のうち、エリアとしては主に日本を扱ったものがダントツで51本、次いで中国13本、韓国8本と続く。合宿や留学経験から、マレーシア、シンガポール、香港、台湾など、やはりアジアが多いが、欧米やアフリカも一定数あり、ベジタリアンやLCCなど地域を問わない一般的な題材もある。テーマとしては、重複や分類の仕方に異論もあろうが、観光19本、聖地巡礼やサブカルチャーなどのコンテンツツーリズムが16本で続く。ICTも15本あり、特に初代ゼミではテーマが揃い、報告書に「アジアのIT」と題するほどだった。地域研究9本、まちづくり6本、文化一般と食文化、教育、そしてダークツーリズムも5本あった。環境とエコツーリズムも併せると5本になる。インバウンド、交通、メディアはそれぞれ4本だった。
 こうして見ると、確かに指導教員の専門や関心が反映しているようだが、私としては決してテーマを押し付けたり誘導したりしたつもりはない。確かにテーマが一つ決まっていて、それについて全員が探究するというゼミもある。その方が相乗効果もあり、レベルも揃うかもしれない。何より指導する方も簡単だろう。しかし、最初に述べた、自分が持ち続け、考え抜けるテーマは人それぞれではないか。正直、指導、評価する方はたいへんだが、私が刺激を受けることも少なくない。たとえばダークツーリズムについて、東日本大震災後に注目されたが、戦争遺産として本ゼミでは先んじて卒論まで出ていることは研究史としても特筆される(ちょっと大袈裟かな?)。
 いまどき、いつまで安くないコストをかけて印刷し、重い冊子をつくるのか、自問自答することもある。他の報告書類はすでに電子出版に切り替えている。この辺は、現役だけでなく、先輩にも意見をもらいたいところだ。

 

年次 タイトル 地域 テーマ
産関00 韓国インターネットの発展と過程 韓国 ICT
産関00 韓国のインターネットと電子商取引 韓国 ICT
産関00 中国のIT産業 中国 ICT
産関00 中国の携帯電話産業 中国 ICT
産関00 中国デジタル家電企業のグローバル化 中国 ICT
産関00 中国のモバイル産業 中国 ICT
産関00 香港におけるデジタル21戦略とICカード 香港 ICT
産関00 台湾IT産業の発展と対中依存のディレンマ 台湾 ICT
産関00 タイのIT教育と政策 タイ ICT
産関00 シンガポールのIT政策、IT教育 シンガポール ICT
産関00 シンガポールとネット時代における知的財産権 シンガポール ICT
産関00 マレーシア、マハティールのIT政策 マレーシア ICT
産関00 インドの情報政策と情報教育 インド ICT
産関03 巨大国家インドの成長可能性 インド 地域研究
産関03 IT大国インドの教育 インド 教育
産関03 アジアのIT集積地帯:インドとマレーシア アジア ICT
産関03 シンガポールから学ぶ日本の観光政策 シンガポール 観光
産関03 大連と日本:侵略地からビジネスパートナーへ 中国 地域研究
産関03 中国での保険ビジネス展開 中国 地域研究
産関03 中国で生き残るために:日中の化粧品産業 中国 地域研究
産関03 中国農民工とその子女の教育について 中国 教育
産関03 日系企業の人事戦略から見た中国市場成功方式 中国 地域研究
産関03 中国のマス・メディア:中国放送環境の変化 中国 メディア
産関03 巨大産業化する中国携帯電話市場 中国 ICT
産関03 香港の若者と日本文化 香港 コンテンツ
産関03 日中関係について 中国 コンテンツ
産関03 韓流ブームは日韓関係の架け橋になるか 韓国 コンテンツ
産関03 日本の若者文化の国際化 日本 コンテンツ
産関03 世界に広がるOTAKU文化 日本 コンテンツ
観光05 観光地のイメージと社会関係 日本 メディア
観光05 インドネシア−バリ島における観光開発 インドネシア 観光
観光05 東アジア・欧米におけるサブカルチャーと観光について アジア コンテンツ
観光05 日本の屋台と欧米のオープンカフェ−公共空間の利用がもたらす効果− 日本 観光
観光05 川の再生とまちづくり アジア まちづくり
観光05 地球温暖化によるモルディブの水没危機 モルディブ 環境
観光05 記憶産業としての沖縄戦跡観光 日本 ダークツーリズム
観光05 サイパンを事例として戦争という観光資源を考える サイパン ダークツーリズム
観光05 カナダ・ケベック州における二公用語政策の功罪 カナダ 地域研究
観光05 インドとカースト制 インド 文化
観光05 香港人のアイデンティティ形成とその行方 香港 地域研究
交流06 ベジタリアンについて   食文化
交流06 交流する日本と韓国の食文化 韓国 食文化
交流06 台湾の「哈日族」から見るポップカルチャーと女性 台湾 コンテンツ
交流06 日本との比較から考えるビール大国ドイツ ドイツ 食文化
交流06 温泉地療法と温泉療養   観光
交流06 京都観光における修学旅行について 日本 観光
交流06 屋久島の観光 −エコツーリズムとマスツーリズムの混在− 日本 エコツーリズム
交流06 ドイツの外国人誘致政策と日本の外国人誘致政策の比較 ドイツ インバウンド
交流06 リゾートの開発について―海浜リゾートを例に― アジア 観光
交流06 エコビジネスの現状と可能性   環境
交流06 ベトナムにおける戦跡観光について ベトナム ダークツーリズム
交流06 教育制度から作られる国民性   教育
交流06 ひとり旅をめぐる交流文化 ヨーロッパ トラベルライティング
交流07 イスラーム建築の変容と観光   建築
交流07 沖縄における戦跡と観光の関わり方−ヒトからモノへ語りつぐ未来− 日本 ダークツーリズム
交流07 シンガポールにおけるエスニックツーリズムについて-国民性と民族性- シンガポール 観光
交流07 日本のエスニック・レストランにおける諸問題とその役割 日本 食文化
交流07 近代アジアにおける「日本語」教育 アジア 教育
交流07 屋久島におけるエコツーリズム 日本 エコツーリズム
交流07 京浜工業地帯のテクノスケープへの評価の変遷と観光 日本 観光
交流07 日本における「“アキバ的“美少女文化」−萌え大国にっぽん− 日本 コンテンツ
交流07 ディズニーランドの魅力の諸相 日本 ディズニー
交流07 秘境駅と観光−旅行者を惹きつけるもの− 日本 交通
交流07 日本の鉄道の現状と鉄道の活性化における観光の可能性 日本 交通
交流07 貧困問題におけるツーリズムの可能性−キャメロンハイランドにおけるオランアスリ社会を事例として− マレーシア 観光
交流07 難民の教育問題−パレスチナ難民を事例として− パレスチナ 教育
交流07 日本人観光客の視点から見たソウル観光−韓流後の変化− 韓国 コンテンツ
交流07 「地域ブランド」形成と観光まちづくりに関する研究−大分県湯布院町を事例として− 日本 まちづくり
交流07 日本におけるインバウンド・ツーリズムの歩みとその展望 日本 インバウンド
交流07 真の「観光立国」を目指して−観光庁が日本の観光業界にもたらすもの− 日本 観光
交流08 日本の多文化共生 日本 文化
交流08 愛国心とナショナリズムが形成する国民性 日本 文化
交流08 なぜディズニーリゾートは日本人を魅了し続けているのか 日本 ディズニー
交流08 フランスの観光政策 フランス 観光
交流08 ニューヨーク市における都市観光 アメリカ 観光
交流08 都市のインバウンド政策のあり方 ―集客都市にむけて地方行政に期待されること― 日本 観光
交流08 日本の産業観光 ―インバウンド招致のために― 日本 観光
交流08 スーパーマーケットに見る東南アジアと観光 アジア 観光
交流08 観光カジノの日本への導入と展望 日本 観光
交流08 変わりゆく舞台、万国博覧会 中国 博覧会
交流08 タイにおける売買春産業 ―観光産業とのつながり― タイ 観光
交流08 観光産業におけるロングステイの立ち位置 マレーシア ロングステイ
交流08 若者の海外旅行離れに関する考察 日本 観光
交流09 フリーメイソンと革命の歴史 ヨーロッパ 歴史
交流09 韓国の大衆文化 —海外に拡大する「韓流」— 韓国 コンテンツ
交流09 かわいい聖地巡礼 日本 コンテンツ
交流09 メディアコンテンツと観光振興 日本 コンテンツ
交流09 プロ野球の地域密着化と球団マスコットの役割 日本 コンテンツ
交流09 東京マラソンと観光 日本 スポーツ
交流09 日本人の結婚観と婚活現象 日本 文化
交流09 グローバル化された社会における文化の変容 日本 文化
交流09 LCCが航空業界と旅客に及ぼす影響   交通
交流09 日本の空港の政策 ―地方空港を中心に― 日本 交通
交流09 Space Tourism―宇宙観光の発展と、宇宙旅行時代の幕開け― 宇宙旅行
交流10 ぺットツーリズム-ペットの家族化によるペットビジネスの発展- 日本 ペット
交流10 五感をつかったまちづくり 日本 まちづくり
交流10 若者を惹きつけるIターンの魅力 日本 観光
交流10 環境教育としてのエコツーリズム-持続可能な社会づくりに向けて- 日本 エコツーリズム
交流10 まつりと観光 -音楽フェスティバルを用いた地域振興- 日本 祭り
交流10 韓流ブームから見る「ソフトツーリズム」の可能性 韓国 コンテンツ
交流10 娯楽系旅番組からみる都市観光 日本 メディア
交流10 近代イギリスの田園都市 イギリス まちづくり
交流10 ファッションのグローバルスタンダード   ファッション
交流10 ジブリ映画とコンテンツ・ツーリズム 日本 コンテンツ
交流10 歴史を語り継ぐ沖縄戦跡 日本 ダークツーリズム
交流11 アニメツーリズムの持続可能性についての考察 日本 コンテンツ
交流11 アルコールツーリズムの実態に関する調査 日本 食文化
交流11 旅行系webサービスによる新しい旅のかたち 日本 メディア
交流11 コンパクトシティ政策の歴史的発展と中心市街地の観光資源への影響 日本 まちづくり
交流11 人口減少社会における観光まちづくりの可能性 日本 まちづくり
交流11 千葉県成田市のインバウンド観光の事例から見る日本のインバウンド観光 日本 インバウンド
交流11 シエラレオネの経済発展の遅れと内戦の影響 シエラレオネ 地域研究
交流11 アメリカ黒人を取り巻く環境・歴史から探る黒人音楽のパワー アメリカ 音楽
交流11 現代韓国における土葬から火葬への変容 韓国 地域研究
交流11 東南アジアムスリムの訪日観光について マレーシア インバウンド
交流12 旧東ベルリンエリアの観光地 ―オスタルギーと昭和レトロの比較― ドイツ まなざし
交流12 日本の伝統文化、おもてなしの真意とは何か 日本 ホスピタリティ
交流12 LGBTインバウンドツーリズムの可能性について 日本 ジェンダー
交流12 多肉植物の観光活用 日本 植物
交流12 ショッピングツーリズム ―インバウンドにおける重要なポジションとしてのショッピング― 日本 ショッピング
交流12 歴史的建築物と伝統的町並みの観光活用についての考察 ―兵庫県篠山市の古民家活用事業NIPPONIAを事例に― 日本 建築
交流12 スポーツツーリズムの課題と可能性 ―プロ野球を事例にして― 日本 スポーツ
交流12 台湾における日本統治時代遺産群の継承・再活用及び観光地化―車埕を研究対象として― 台湾 歴史
       
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