バンテン遺跡研究会インドネシア調査報告会
皆様
下記のように、バンテン遺跡研究会の本年度インドネシア発掘調査(バンテン・ティルタヤサ遺跡及びブトン・ウォリオ城跡)の報告会を行います。どなたでも参加できますので、お知らせします。
主催:バンテン遺跡研究会
日時:10月29日(日) 午後3時〜5時
場所:福岡市埋蔵文化財センター(福岡市博多区井相田2-1-94 Tel.092-571-2021)
★博多駅交通センターより41番「雑餉隈営業所行き」で「板付中学校前」下車すぐ(乗車時間約30分)
★福岡市埋蔵文化財センターのホームページ http://www.city.fukuoka.jp/maibun/
報告:15:00〜15:40 滝本正志(福岡市教育委員会)「両遺跡発掘調査の経過」
15:40〜15:50 稲垣正宏(国際航業文化財調査室)「バンテン・ティルタヤサ遺跡出土の陶磁器」
16:00〜16:10 川口洋平(長崎県教育委員会)「ブトン・ウォリオ城跡出土の陶磁器」
16:10〜16:50 坂井 隆(上智大学アジア文化研究所客員)「東南アジア考古学での両遺跡調査成果の意義」
内容:
1 バンテン・ティルタヤサ遺跡はジャワ島西端に位置し、17世紀後半の短期間しか存続しなかったバンテン王国離宮跡である。97年からインドネシア国立考古学研究センターと共同で行っている発掘調査で、中心の離宮跡では大量の陶磁器(日本の肥前陶磁と中国景徳鎮磁器)が出土し、バンテン王国最盛期の重要な陶磁貿易の拠点であったことが判明している。
離宮跡そのものは大半が破壊されて大きさの解明も難しい状態だが、04年から開始した第3期調査の結果、海に続く周辺の運河網跡には、ほとんど完全な状態で離宮と同時期のレンガ築造の水門施設群が残っていることが判明した。今回の調査で、海岸に最も近いスジュン水門跡(高さ4m)の全体構造を解明することができた。この遺構群は、バンテン王国関連遺跡ではほぼ唯一17世紀後半の姿を残すものといえる。
運河の水門遺構の調査は、インドネシアはもちろん東南アジアでも極めて珍しいものであり、港市国家バンテンの性格と構造を考える上で大きな資料を提供となりうる。
2 ブトン・ウォリオ城跡はスラウェシ島南東のブトン島に位置するブトン王国の王城跡で、17世紀に築造されたと考えられる。バウバウ港を見下ろす100mの隆起珊瑚礁崖際に、総延長2.7kmに及ぶ珊瑚石灰岩の城壁が築かれ数多くの堡塁と城門を持ち、東南アジアの在来城郭としては最も堅固なものの一つと言える。
城壁のほとんどは過去20年間に修復されているが、04年から行っている共同調査によって修復時に発見された大量の陶磁器の存在が明らかにできた。最盛期の18世紀前半は数多くの壷が輸入されており、特にヨーロッパ特注品の日本の肥前磁器壷が100点以上まとまってもたらされていたことが特筆された。
昨年から南辺城壁外側にある空堀の発掘調査を行ったが、ここからもウィーンにしか伝世品のない肥前壷の大破片が出土した。また堀底までの発掘により、堀の機能が城壁築造修築と密接な関係があることが判明した。
このような調査成果は、インドネシア史ではほとんど注目されてこなかったブトン王国の果たした役割、特に異常に高い防衛意識と豊富な経済力の解明に貢献できうると考えられる。
####################################
坂井 隆(地域研究博士)
370-2101 群馬県吉井町南陽台3-1-14
SAKAI Takashi, Ph.D (area study)
Nanyohdai 3-1-14, Yoshii, Gunma,
370-2101 JAPAN