前々回の総会配布資料で、
「舛谷ゼミ(社会学部産業関係学科1999-2005/観光学部交流文化学科 2006-)は合宿とサブゼミ(プロジェクト)と卒論でできている、と言っても過言ではない。」
と書いた。合宿とプロジェクトについては前回、前々回に配布資料としたので、今回いよいよ卒論について触れてみたい。
 必修でもない卒論に向き合い、何万字も書き綴るのはたいへんなことだ。しかし、これは各自がテーマを持って大学生活を過ごすことへの注意喚起に過ぎない。寝ても醒めても考え続けられるようなテーマを持っているのは一部の人かもしれない。それでも、各人がこれと決めたテーマを持ち続けることで、日々様々な気づきが生まれ、学びのコアにしてもらうことを、どうしてもあきらめられない。1年生の4月の前のめりに学ぼうとする新鮮な姿勢は日々失われ、4年になる頃には、すっかり慣れ切った「日本の大学生」ができあがっているせいもある。
 卒業前に何とか好奇心と向学心を取り戻して欲しい、恩師と呼んでもらえるなら、勉学の指導とその証を残しておきたい、そんな思いもある。卒業後に、もっと勉強しておけばよかったと言う人は多い。その現れの一つとして、卒論を書いておいてよかったと言う人も少なくない。残した結果が大事ではなく、書けても書けなくてもプロセスが大切なのだ。先行研究をさがし、合宿やゼミ中に報告し、何とかでっち上げて事務〆切に間にあわせ、観光学部ではその後レジュメを作成し、報告会で他ゼミや教員の前でプレゼンし、最後にゼミ独自の報告書を仕上げる。どの段階でギブアップしても、何か残るものはあったと信じたい。いつも言うことだが、瞬間的にでも日本一そのテーマについて知っている、と自負できるくらい突き詰めてほしい。事実、書き上げた時点ではそうしたレベルに到達していた卒論もないことはない。今回改めてすべての卒論報告書を見直し、贔屓目ながらそうした思いを強くした。
 巻末に一覧を付したが、123本の卒論・ゼミ論のうち、エリアとしては主に日本を扱ったものがダントツで51本、次いで中国13本、韓国8本と続く。合宿や留学経験から、マレーシア、シンガポール、香港、台湾など、やはりアジアが多いが、欧米やアフリカも一定数あり、ベジタリアンやLCCなど地域を問わない一般的な題材もある。テーマとしては、重複や分類の仕方に異論もあろうが、観光19本、聖地巡礼やサブカルチャーなどのコンテンツツーリズムが16本で続く。ICTも15本あり、特に初代ゼミではテーマが揃い、報告書に「アジアのIT」と題するほどだった。地域研究9本、まちづくり6本、文化一般と食文化、教育、そしてダークツーリズムも5本あった。環境とエコツーリズムも併せると5本になる。インバウンド、交通、メディアはそれぞれ4本だった。
 こうして見ると、確かに指導教員の専門や関心が反映しているようだが、私としては決してテーマを押し付けたり誘導したりしたつもりはない。確かにテーマが一つ決まっていて、それについて全員が探究するというゼミもある。その方が相乗効果もあり、レベルも揃うかもしれない。何より指導する方も簡単だろう。しかし、最初に述べた、自分が持ち続け、考え抜けるテーマは人それぞれではないか。正直、指導、評価する方はたいへんだが、私が刺激を受けることも少なくない。たとえばダークツーリズムについて、東日本大震災後に注目されたが、戦争遺産として本ゼミでは先んじて卒論まで出ていることは研究史としても特筆される(ちょっと大袈裟かな?)。
 いまどき、いつまで安くないコストをかけて印刷し、重い冊子をつくるのか、自問自答することもある。他の報告書類はすでに電子出版に切り替えている。この辺は、現役だけでなく、先輩にも意見をもらいたいところだ。

 

年次 タイトル 地域 テーマ
産関00 韓国インターネットの発展と過程 韓国 ICT
産関00 韓国のインターネットと電子商取引 韓国 ICT
産関00 中国のIT産業 中国 ICT
産関00 中国の携帯電話産業 中国 ICT
産関00 中国デジタル家電企業のグローバル化 中国 ICT
産関00 中国のモバイル産業 中国 ICT
産関00 香港におけるデジタル21戦略とICカード 香港 ICT
産関00 台湾IT産業の発展と対中依存のディレンマ 台湾 ICT
産関00 タイのIT教育と政策 タイ ICT
産関00 シンガポールのIT政策、IT教育 シンガポール ICT
産関00 シンガポールとネット時代における知的財産権 シンガポール ICT
産関00 マレーシア、マハティールのIT政策 マレーシア ICT
産関00 インドの情報政策と情報教育 インド ICT
産関03 巨大国家インドの成長可能性 インド 地域研究
産関03 IT大国インドの教育 インド 教育
産関03 アジアのIT集積地帯:インドとマレーシア アジア ICT
産関03 シンガポールから学ぶ日本の観光政策 シンガポール 観光
産関03 大連と日本:侵略地からビジネスパートナーへ 中国 地域研究
産関03 中国での保険ビジネス展開 中国 地域研究
産関03 中国で生き残るために:日中の化粧品産業 中国 地域研究
産関03 中国農民工とその子女の教育について 中国 教育
産関03 日系企業の人事戦略から見た中国市場成功方式 中国 地域研究
産関03 中国のマス・メディア:中国放送環境の変化 中国 メディア
産関03 巨大産業化する中国携帯電話市場 中国 ICT
産関03 香港の若者と日本文化 香港 コンテンツ
産関03 日中関係について 中国 コンテンツ
産関03 韓流ブームは日韓関係の架け橋になるか 韓国 コンテンツ
産関03 日本の若者文化の国際化 日本 コンテンツ
産関03 世界に広がるOTAKU文化 日本 コンテンツ
観光05 観光地のイメージと社会関係 日本 メディア
観光05 インドネシア−バリ島における観光開発 インドネシア 観光
観光05 東アジア・欧米におけるサブカルチャーと観光について アジア コンテンツ
観光05 日本の屋台と欧米のオープンカフェ−公共空間の利用がもたらす効果− 日本 観光
観光05 川の再生とまちづくり アジア まちづくり
観光05 地球温暖化によるモルディブの水没危機 モルディブ 環境
観光05 記憶産業としての沖縄戦跡観光 日本 ダークツーリズム
観光05 サイパンを事例として戦争という観光資源を考える サイパン ダークツーリズム
観光05 カナダ・ケベック州における二公用語政策の功罪 カナダ 地域研究
観光05 インドとカースト制 インド 文化
観光05 香港人のアイデンティティ形成とその行方 香港 地域研究
交流06 ベジタリアンについて   食文化
交流06 交流する日本と韓国の食文化 韓国 食文化
交流06 台湾の「哈日族」から見るポップカルチャーと女性 台湾 コンテンツ
交流06 日本との比較から考えるビール大国ドイツ ドイツ 食文化
交流06 温泉地療法と温泉療養   観光
交流06 京都観光における修学旅行について 日本 観光
交流06 屋久島の観光 −エコツーリズムとマスツーリズムの混在− 日本 エコツーリズム
交流06 ドイツの外国人誘致政策と日本の外国人誘致政策の比較 ドイツ インバウンド
交流06 リゾートの開発について―海浜リゾートを例に― アジア 観光
交流06 エコビジネスの現状と可能性   環境
交流06 ベトナムにおける戦跡観光について ベトナム ダークツーリズム
交流06 教育制度から作られる国民性   教育
交流06 ひとり旅をめぐる交流文化 ヨーロッパ トラベルライティング
交流07 イスラーム建築の変容と観光   建築
交流07 沖縄における戦跡と観光の関わり方−ヒトからモノへ語りつぐ未来− 日本 ダークツーリズム
交流07 シンガポールにおけるエスニックツーリズムについて-国民性と民族性- シンガポール 観光
交流07 日本のエスニック・レストランにおける諸問題とその役割 日本 食文化
交流07 近代アジアにおける「日本語」教育 アジア 教育
交流07 屋久島におけるエコツーリズム 日本 エコツーリズム
交流07 京浜工業地帯のテクノスケープへの評価の変遷と観光 日本 観光
交流07 日本における「“アキバ的“美少女文化」−萌え大国にっぽん− 日本 コンテンツ
交流07 ディズニーランドの魅力の諸相 日本 ディズニー
交流07 秘境駅と観光−旅行者を惹きつけるもの− 日本 交通
交流07 日本の鉄道の現状と鉄道の活性化における観光の可能性 日本 交通
交流07 貧困問題におけるツーリズムの可能性−キャメロンハイランドにおけるオランアスリ社会を事例として− マレーシア 観光
交流07 難民の教育問題−パレスチナ難民を事例として− パレスチナ 教育
交流07 日本人観光客の視点から見たソウル観光−韓流後の変化− 韓国 コンテンツ
交流07 「地域ブランド」形成と観光まちづくりに関する研究−大分県湯布院町を事例として− 日本 まちづくり
交流07 日本におけるインバウンド・ツーリズムの歩みとその展望 日本 インバウンド
交流07 真の「観光立国」を目指して−観光庁が日本の観光業界にもたらすもの− 日本 観光
交流08 日本の多文化共生 日本 文化
交流08 愛国心とナショナリズムが形成する国民性 日本 文化
交流08 なぜディズニーリゾートは日本人を魅了し続けているのか 日本 ディズニー
交流08 フランスの観光政策 フランス 観光
交流08 ニューヨーク市における都市観光 アメリカ 観光
交流08 都市のインバウンド政策のあり方 ―集客都市にむけて地方行政に期待されること― 日本 観光
交流08 日本の産業観光 ―インバウンド招致のために― 日本 観光
交流08 スーパーマーケットに見る東南アジアと観光 アジア 観光
交流08 観光カジノの日本への導入と展望 日本 観光
交流08 変わりゆく舞台、万国博覧会 中国 博覧会
交流08 タイにおける売買春産業 ―観光産業とのつながり― タイ 観光
交流08 観光産業におけるロングステイの立ち位置 マレーシア ロングステイ
交流08 若者の海外旅行離れに関する考察 日本 観光
交流09 フリーメイソンと革命の歴史 ヨーロッパ 歴史
交流09 韓国の大衆文化 —海外に拡大する「韓流」— 韓国 コンテンツ
交流09 かわいい聖地巡礼 日本 コンテンツ
交流09 メディアコンテンツと観光振興 日本 コンテンツ
交流09 プロ野球の地域密着化と球団マスコットの役割 日本 コンテンツ
交流09 東京マラソンと観光 日本 スポーツ
交流09 日本人の結婚観と婚活現象 日本 文化
交流09 グローバル化された社会における文化の変容 日本 文化
交流09 LCCが航空業界と旅客に及ぼす影響   交通
交流09 日本の空港の政策 ―地方空港を中心に― 日本 交通
交流09 Space Tourism―宇宙観光の発展と、宇宙旅行時代の幕開け― 宇宙旅行
交流10 ぺットツーリズム-ペットの家族化によるペットビジネスの発展- 日本 ペット
交流10 五感をつかったまちづくり 日本 まちづくり
交流10 若者を惹きつけるIターンの魅力 日本 観光
交流10 環境教育としてのエコツーリズム-持続可能な社会づくりに向けて- 日本 エコツーリズム
交流10 まつりと観光 -音楽フェスティバルを用いた地域振興- 日本 祭り
交流10 韓流ブームから見る「ソフトツーリズム」の可能性 韓国 コンテンツ
交流10 娯楽系旅番組からみる都市観光 日本 メディア
交流10 近代イギリスの田園都市 イギリス まちづくり
交流10 ファッションのグローバルスタンダード   ファッション
交流10 ジブリ映画とコンテンツ・ツーリズム 日本 コンテンツ
交流10 歴史を語り継ぐ沖縄戦跡 日本 ダークツーリズム
交流11 アニメツーリズムの持続可能性についての考察 日本 コンテンツ
交流11 アルコールツーリズムの実態に関する調査 日本 食文化
交流11 旅行系webサービスによる新しい旅のかたち 日本 メディア
交流11 コンパクトシティ政策の歴史的発展と中心市街地の観光資源への影響 日本 まちづくり
交流11 人口減少社会における観光まちづくりの可能性 日本 まちづくり
交流11 千葉県成田市のインバウンド観光の事例から見る日本のインバウンド観光 日本 インバウンド
交流11 シエラレオネの経済発展の遅れと内戦の影響 シエラレオネ 地域研究
交流11 アメリカ黒人を取り巻く環境・歴史から探る黒人音楽のパワー アメリカ 音楽
交流11 現代韓国における土葬から火葬への変容 韓国 地域研究
交流11 東南アジアムスリムの訪日観光について マレーシア インバウンド
交流12 旧東ベルリンエリアの観光地 ―オスタルギーと昭和レトロの比較― ドイツ まなざし
交流12 日本の伝統文化、おもてなしの真意とは何か 日本 ホスピタリティ
交流12 LGBTインバウンドツーリズムの可能性について 日本 ジェンダー
交流12 多肉植物の観光活用 日本 植物
交流12 ショッピングツーリズム ―インバウンドにおける重要なポジションとしてのショッピング― 日本 ショッピング
交流12 歴史的建築物と伝統的町並みの観光活用についての考察 ―兵庫県篠山市の古民家活用事業NIPPONIAを事例に― 日本 建築
交流12 スポーツツーリズムの課題と可能性 ―プロ野球を事例にして― 日本 スポーツ
交流12 台湾における日本統治時代遺産群の継承・再活用及び観光地化―車埕を研究対象として― 台湾 歴史