第三回ゼミ総会(2014.5)配布資料です。ドレスコード民族衣装で、こんな感じでした。

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 前回のゼミ総会配布資料「ゼミ合宿の記録」で、「舛谷ゼミは合宿とサブゼミ(プロジェクト)と卒論でできている、と言っても過言ではない。」と書いた。教授昇格時の第一回(2008.5.17)、10期生記念の第二回(2012.5.26)、齢五十を迎え、立教在籍予定三十年間の折り返し、ちょうど十五年目の今回まで、その気持ちは変わっていない。
 そもそも「プロジェクト」とは何か? 何かをやり遂げてほしいという機能への願いを込めて、一貫して「サブゼミ」という形式的な呼称を使って来なかった。元は私が知りたいこと、掘り下げたいことをテーマにして、一緒に探求する目的だったが、現在は同期による横の学びと平行し、学年通したピアサポートの場として位置づけている。何と言っても、教えることは学ぶこと、なのだ!
 サブゼミリーダーが活動の過程で意識を高め、ゼミ長をサポートし、ゼミ運営を円滑化する効果がある一方、主に昼休みに行われるランチミーティングの頻度が高く、私の最も嫌う「やらされてる感」が漂ってしまうのが今後の課題である。効果的な進め方について、現役、OBでぜひ意見交換してほしい。
 なお、以下の記述は過去wikiウェブを確認しながら記憶で書いているので、補足訂正すべき箇所はぜひ教えてもらいたい。

ICT
元ITプロジェクト。サイバーラーニングを担当する舛谷ゼミのキープロジェクトで、ここのリーダーがゼミ長になることが比較的多かった。社会学部でゼミをはじめたとき、メディアセンターの役職をしていて、IIJやドコモなど、立教出入りのIT企業との産学連携を進めたいという気持ちがあった。アキバフィールドワークで2万円パソコン(100ドルPC:OLPCのつもりだった)を購入貸与し、Linux OS(近年はUbuntu)をクリーンインストールしてもらうのが常だった。10からタブレットに移行し、直近の13では電子書籍端末を強調した。デバイス目当てを避けるため、ITパスポート取得や仮想サーバ構築など、様々なタスクを課している。09の使い残しゼミ費に補充し、「ゼミ生がICTについての見分を広め、教養を高めることを援助するため、経済的援助を与えることを目的とする」ICT援助金を設立し、自己申告で資格や機器など何でも、半額5000円上限まで補助している。この基金への寄付を歓迎する。

観光まちづくり
元エスニックタウンプロジェクト。担当者の専門(華僑研究)を踏まえ、チャイナタウンをはじめとするエスニックタウンの探訪を目的としたが、色々なところに行きたくなったので、どこでも行けるよう「観光まちづくり」を行う現場へのフィールドワークに拡張した。毎年6月に行われる屋形船は、定番化した人気企画である。08から自主企画ではじまった山手線徒歩一周の運営も、定例化に伴い行っている。各地で行われるボランティアガイド等、見に行きたい場所はたくさんあるが、魅力的なフィールドを見つけたときは、ぜひ教えてほしい。
なお、10から活動実態が似通ってしまった、まなざし観光(旧なつかしい論+エキゾチック論)を合併吸収している。観光のまなざしの二つの代表例、なつかしいとエキゾチックは自己と他者の裏表であるという一応の結論を出し、アーリ『観光のまなざし』未訳の第三版の定義の翻訳もしてもらい、惜しむ向きもあったが、役割を終えたと考えている。

メディア・ツーリズム
元エスニックメディアプロジェクト。これも担当者の専門を踏まえ、多民族社会における少数民族語メディア(エスニックメディア)を対象としたが、日本だと中国語など日本語以外になってしまうので、観光資料ともなる海外の日本語メディアも対象にしていた。マスコミはじめ、メディア研究への関心、そして近年のアニメ聖地巡礼等のコンテンツツーリズムの展開に応じて10から改称した。フィールドワークも聖地巡礼すればよいので、やりやすくなった。

トラベルライティング
毎年トラベルライティングアワードを選定し、勝手に表彰している。はじめたときから、これはゼミがなくなっても続くだろうと自惚れた企画。すべてのトラベルライティング(旅エッセイ)を対象にするのは難しいので、「日本語機内誌」という限定を設けた。毎年JTB旅の図書館や立教新座図書館所蔵の機内誌を読み、候補作をしぼって全ゼミ生の投票で決めている。経年広報の効果で、研究室に寄贈される機内誌も増え、まだ観光マスコミに限定されるが、学外の関心も高まっている。11からプレスリリースを打ち、授賞式(受賞者欠席なら発表会)を開催している。

日本とアジア
04発議で唯一の学生発プロジェクト。流行語大賞2013で候補50に残るほど一般的になったダークツーリズム(死、悲劇、暴虐など負の遺産を観る)を中心に、日本ならではの災害跡地や公害からの環境回復を対象にしている。東日本大震災後の現在、広く注目されているが、個人の研究課題としては、本来の定義である戦跡観光を中心に考えている。学生プロジェクトの方は、広く関心の趣くままに進めてほしい。靖国を含む皇居周辺見学等、フィールドワークを重ねて練り上げたコースもある。

グローバルスタンダード
当初の意図はインターネットの標準規格であるRFC やISOなどの国際標準化を対象とする目論見だったが、青木保の文章(『憩いのロビーで』所収)にあった「もしグローバルなスタンダードというものがあるとしたら、国際的なチェーンホテルの出現はそれを端的に示すことだと思う。」を踏襲したソフトパワー論に移行し、ホテルチェーンやファッション、ブランドなど、グローバルな消費文化の魅力の源泉を探ってもらっている。
自主企画ではじまった富士登山の定例化に伴い、「世界遺産」というグローバルスタンダードを対象に加えている。

ホームステイ
2004年から行っていたブルネイ合宿は主にイスラム家庭ホームステイだが、現地の評判がよく、毎年来られないかと要望があり、07でゼミ合宿からスピンアウトさせ自主企画で毎年実施にし、08からは新設ホームステイプロジェクトに運営を移管し、私が行かなくてもできる体制を整えた。その後、学部間協定校のマラヤ大やモンゴル国立大など、立教訪問プログラムに際し、主に土日一泊のホームステイ受入れがはじまり、送り出しと受入れの両面から、ホームステイを検討することができるようになった。ペナンやバリなど送り出しに困ったことはないが、日本側の受入れは常に不足しているので、ぜひOBにも協力をお願いしたい。地元志木ロータリークラブの日豪相互ホームステイなど、外部から協力を要請されることもある。

 こうして見ると、プロジェクトの内容が各自の卒論テーマにつながったり、就職に影響したりしているケースも散見される。しかし、プロジェクトは生き物である。今後も生没流転を繰り返して行くのを、むしろ楽しみにしている。

 さて、末筆ながら私の五十天命である。大学の仕事には、研究、教育、学務という三種類がある。学務で便利に使われているのはご存知の通りだが、もちろんこれではない。この会場には全ゼミ生の半分近くの教え子が居るが、全員と顔見知りなのは私一人である。研究も大事だが、やはり私は教育だと思う。
 この9月からその名も「研究休暇」をいただき、一年間、シンガポールの南洋理工大人文社会科学部で教えることになった。この経験が今後の教育をパワーアップさせることを目指したい。皆さんリピーターかもしれないが、新たなシンガポールの魅力を探し、この間に縁あって訪れる方がいれば、ぜひ現地でお伝えしたい。とはいえ、ずっと日本を離れているわけでなく、MOOC(大規模オープンオンライン講座)の一環であるgacco.orgで科目も担当し、一時帰国しての反転学習(スクーリング)も予定している。
 次回総会は私が勤続20年で立教校友の権利を得る2016年度あたりだが、今回初めて現役学年(しかも就活中)の手を煩わせたが、初回03、二回目07に続き、次回運営してくれるという学年があれば歓迎する。