Travel Writing
1-1. トラベルライティングとトラベルライター
- 主にトラベルライターが執筆する旅エッセイ
- トラベルライター
- 旅をして、その体験を表現する人
- 日本旅行作家協会
- 現在正会員約250名
- トラベルライターの執筆スタイル
- 旅行雑誌やガイドブック執筆、原稿買取り、印税契約なしの「ライター」
- 映画批評、人物インタビュー、持ち込み紀行文出版の依頼ではなく「旅」から本を著し印税契約を結ぶ「作家」
- 求められるもの
- どのように旅したか
- 地域のおおまかな姿はどうか
- 日本に伝わっている姿と実態の違いは
- 旅をしてどう感じたのか
- 旅人のパーソナリティや立ち位置
1-2. トラベルライティングのスタイル
- 書き方
- 旅日記型
- 時系列に経験を再現
- 場面転換と意外性
- テーマ型
- 旅先で興味を持った事柄から文章展開
- 著者のパーソナリティを通し人・生活・社会を描く
- 日本における広義のトラベルライティング
- 「旅行記」は時系列に書かれる傾向
- 日本における狭義のトラベルライティング
- 旅をテーマとした紀行文
- エッセイ色強い
- 大切なこと
- シンプルな表現手法で感動を与え、大きな共感を呼べるか
- 読み手がその土地の様子や場所・民族・言語を知らない場合も
2. トラベルライティングをどのように探究していくか
- 出版業界ではステータスが低いイメージ
- トラベルライターは尊称たりえない
- 日本には書店のスペースは少ない
- 海外では必ず書店コーナーあり
- 言葉自体の知名度が低い
こうした「トラベルライティング」の価値を高めるため、舛谷ゼミでのトラベルライティングプロジェクト
日本では書き手としての国有性が低いトラベルライターを奨励するため、トラベルライティングアワードなどの活動を行っている。
「トラベルライティング」の価値が日本国内で広がる
↓
日本のメディア、日本でのライターの活躍の場が増えていく
↓
トラベルライティングを生業にするライターが増える
3-1. トラベルライティングアワードについて
- トラベルライティングプロジェクトの主活動
- 毎年1~12月に発行された日本語機内誌、車内誌に掲載されたトラベルライティングを、メンバーで講読し、その中から優秀作品を選ぶ。
- 種別としては、主に日本語の機内誌を講読する(JAL・ANAなど)。
- 目的
- トラベルライターを奨励することを目的とする。
- 形式
- 署名原稿である。
- 複数ページにわたり、おおむね2000字以上
- 基準
- 「私たち観光学部生が興味深く読める」
- 「読んでみて新鮮な発見がある」
- 「読んだ後そこに行ってみたいと思える」
- 「写真が効果的に利用されている」 など
- 注意点
- 表紙に明記されている特集はチェック
- 1ページの短い連載コラムは除く
3-2.トラベルライティングアワードについて
- 選考方法
- プロジェクトメンバーが対象誌から選考基準に当てはまる作品を半期を通じて講読する。
- 作品の中から形式的に抽出した候補作を読み、ロングリストを作成する。
- 10本以内に厳選し、ショートリストを作成。ゼミ生全員に読んでもらう。
- 一人一票で投票し、得票の多い作品を選ぶ(インターネット投票)。同数の場合は投票者の意見を聞いた上で、プロジェクトメンバーで選考する。
- 表彰
- トロフィー、表彰状、挨拶文の送付
- レスポンス
- 表彰式、式内の受賞者らスピーチ、講演
4. トラベルライティングプロジェクトの成果
- トラベルライティング開始後数年は、収集できる機内誌も限られており、企業が送付してくれる機内誌数も少なかった。
- 2011年度より収集可能な機内誌も増加、企業側から送っていただける機内誌も増えてきた。
- トラベルライティングプロジェクトが少しずつ浸透し、企業側からも注目を集めるものとなったという成果を表す
- トラベルライティングアワードに選ばれる作品の特徴
- 表紙に見出しで出ているような目玉特集の記事である
- スケールが大きく、写真などふんだんに使われているもの
- 岡田カーヤ氏、吉田直子氏のように毎回候補作に上がる方もいるなど、トラベルライティングを評価するうえでのポイントが少しずつ形成されている様子も見受けられる。
- 他の賞や書籍収録など、他で重複して評価されるケースも
5. トラベルライティングアワード受賞作
2007年(第一回)
- 野地 秩嘉
- 『SKYWARD』2006年9月号掲載
- 「メルボルン 南の古都の静かな好意」
2008年(第二回)
- 山口 湖葉(山口 あゆみ)
- 『SKYWARD』2007年10月号掲載
- 「ギリシャ サントリーニ島 眩しい光 静かな余韻」
- のちに『エーゲ海の小さなホテル』日本書籍、2008年所収
2009年(第三回)
- 野村 友里
- 『翼の王国』2008年5月号掲載
- 「FRUITS TRIP IN TAIWAN」
2010年(第四回)
- 岡田 真由美
- 『翼の王国』2009年9月号掲載
- 「リスボン祝祭紀行」
- 在日ヨーロッパ観光委員会主催「第3回 ヨーロッパ・メディア・アワード」雑誌部門グランプリ受賞(2009年末)
2011年(第五回)
- 児島 雄一
- 『SKYWARD』2010年12月号掲載
- 「アラスカ 冬のアラスカ、王道プラン」
2012年(第六回)
- 岡田 カーヤ(岡田 真由美)
- 『翼の王国』2011年9月号掲載
- 「フランス・ボルドー地方 ワイン畑を走る」
2013年(第七回)
- 吉田 直子
- 『翼の王国』2012年5月号掲載
- 「ポルトガル・ナザレ 7枚のスカートと1001のバカリャウ物語」
2014年(第八回)
- 村岡 俊也
- 『翼の王国』2013年2月号掲載
- 「ヨセミテの短い秋」
2015年(第九回)
- 吉田 直子
- 『翼の王国』2014年1月号掲載
- 「南の国の鍋事情」
2016年(第十回)
- nakaban
- 『翼の王国』2015年9月号掲載 「Colours in MELAKA マラッカ色彩憶え描きの旅」
2017年(第十一回)
- しまお まほ
- 『翼の王国』2016年3月号掲載
- 「京の裏路地はよくしゃべる」
2018年(第十二回)
- 柏木 光大郎
- 『翼の王国』2017年2月号記載
- 「トイ・トレインが行く!」
2019年(第十三回)
- 山田 やすよ
- 『SKYWARD』2018年2月号記載
- 「食都の朝ごはん」
2020年(第十四回)
- 村上 春樹
- 『SKYWARD』2019年9月号記載
- 「雨の中のクラクフ」
2021年(第十五回)
- 瀬戸内 みなみ
- 『ひととき』2020年1月号掲載
- 「長崎−坂、階段、ときどき猫」
2022年(第十六回)
- 近藤 純夫
- 『SKYWARD』2021年3月号掲載
- 「ハワイ 虹色の島へ~アーヌエヌエを待ちながら~」
2023年(第十七回)
- 瀬戸内 みなみ
- 『ひととき』2023年3月号掲載
- 「長崎 異国菓子ものがたり」
6. 今後について
- 対象を日本語機内誌から、旅行雑誌、新聞などに拡大し、アワードの知名度を上げることによって、「トラベルライティング」の国内における認知度を高める
- 旅行雑誌例:
- Seven Seas
- Figaro Voyage
- 旅咲
- Vacation
- Transit
- ’Scapes
7. 参考文献
- 一般社団法人 日本旅行作家協会(1973):「日本旅行作家協会設立宣言」 http://www.jtwo.net/Purposeandhistory-j.htm (2013年11月10日アクセス)
- 樋口聡(1999):『トラベルライターになる方法』、株式会社 青弓社
- ビート・オニール(2008):『旅行ライター入門講座〜旅行ライターとして旅立ちたい あなたへ〜』、バベルプレス
- 岳真也(2006):『上手な旅行記の書き方』、株式会社 心交社
- 前川健一(2003):『旅行記でめぐる世界』、株式会社 文藝春秋