東南アジア史学会関東部会6月例会のご案内
会員各位
関東部会6月例会のご案内をお送りいたします。
皆様のご参加をお待ちしています。
日時: 6月24日(土)午後1時より
今回は報告が二つですので、いつもより早く始まります。
会場: 東京大学
赤門総合研究棟 8階
849号教室
本郷の東京大学の赤門を入ってすぐ右手の建物が赤門総合研究棟です。
そこのロビーを入り、左奥のエレベータで8階にお上がり下さい。
報告1:中山三照(大阪市立大学大学院創造都市研究科都市ビジネス専攻アジア・ビジネス研究分野)
題名1:「タイにおける潮州系華人経営者の倫理功徳と高齢慈善活動」
報告2:西廣直子(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
題名2:「インドネシアにおける高齢化と高齢者の現状 —ミナンカバウの事例—」
参加費:一般200円、学生100円
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連絡先 関東地区委員 奈良修一
報告要旨1
中山三照
「タイにおける潮州系華人経営者の倫理功徳と高齢慈善活動」
今日、我が国は、人類が過去に経験したことのない超高齢化社会の到来を迎えようとしている。しかしながら、我が国の高齢化問題を取り巻く状況は極めて深刻な状況であるといえよう。例を挙げれば、年金をめぐる公平性問題や医療制度に関する国民負担問題、更には、少子化高齢化に伴う社会保障制度の歪みなど、解決しなければならないことは山積である。近年、我が国における社会福祉施設の現場において、介護老人を職員が虐待するような悲しい出来事が発生している。こうした事件は、我が国における高齢化問題や老人ホーム経営について根本的に見直す時期が来ているのではないだろうか。
タイ王国・サムートプラカーン県に所在する、華人系高齢慈善機構である北欖養老院は、現在、68名の身寄りのない老人が入居している。そして、北欖養老院職員と老人入居者との相互扶助的関係と養老院の地域社会に対する姿勢は、老人ホーム経営の原点を考察する上でも、私たち日本人にとって学ぶべき点が存在するものと考えられる。本研究発表では、タイにおける潮州系華人経営者の寄付金により設立された、華人系高齢慈善機構である、北欖養老院の高齢慈善活動の取り組みを考察することにより、我が国における老人ホーム経営のあり方について、学ぶべき点を積極的に論じることにする。
報告要旨2
西廣直子
「インドネシアにおける高齢化と高齢者の現状 —ミナンカバウの事例—」
近い将来全アジアを通じて急速に人口の高齢化が起こるといわれているが、世界でも第4位の人口を擁するインドネシアも例外ではなく、今後20年間に高齢者人口が倍増するような急激な高齢化が予測されている。ところが高齢化の条件が揃っている地域ではすでに高齢化が進んでおり、ミナンカバウの本拠地西スマトラもそのひとつである。なかでも調査地域は人口高齢化率が2000年で10.3%と、すでに高齢化が起こっていることが実証された。
そこでの高齢者の生活はどうであろうか。ミナンカバウは世界でも最大規模の母系社会であるが、同居高齢者の約80%が娘および娘夫婦と同居していることは、母系社会ならではの特徴であると考えられる。だが高齢者の1人暮しおよび高齢者夫婦の2人暮しのみ世帯も約36%あり、村ではいわゆる「高齢化問題」も散見された。
ところがインドネシアでは高齢化問題に対する研究が緒についたばかりである。今後確実に急速に高齢化を迎えるにあたり、迅速な対応が迫られる中で、当研究での高齢化および高齢者の現状把握が意義を持つものと考える。