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13/05/27/3

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*映画『ブノハン』について
**映画のテーマ
自然保護と開発

二項対立:伝統/近代、農村/都市、タイ/マレーシア

**舞台
マレーシアの東海岸、タイ国境に近い架空の街ブノハン。行政区画で言うと、クランタン州のあたりに位置する。
タイは上座部仏教の国であり、マレーシアはイスラム教の国である。そのため両方の宗教が混ざり合うこの地域では、抗争が起こりやすい。マレーシアのブノハン出身のボクサーであるアディルが命を狙われることになったのは、タイで行われた試合において、負けなければならなかった試合に勝ってしまったからである。

**オープニングシーン
-実際の場面からテレビの中の世界への移行←作られた世界を意識させる構成
-映画の冒頭、父親とダガーが同じ家の中にいるのに対面しない←二人は違う世界を生きていることの示唆

**ラストシーン
-ヤーと少年の対話。「自然に還れ」←父親の意識が少年に乗り移っている。「開発を許すな」
-ヤーと少年の対話。「自然に還れ。」←父親の意識が少年に乗り移っている。「開発を許すな。」
-バカーの父殺しは、全てワヤンのスクリーンの裏で行われた←スクリーンを出ない、ワヤンの一場面であることの暗示
-少年~血←ラストシーンがオープニングシーンと繋がっている

*監督について
**人物像
-すこし古い世代の映画を好んで観てきた。
-ハリウッド映画のような物語の語りでなく、よりヨーロッパ映画に近い語り口から映画を作る。

**考え
-映画のフレームは意味を持たなければならない。
-古い映画から学べるものは多い。

*内容について
**治療儀礼
-マレーシアマレー半島北東部でのみ行われる、治療のための儀式。音楽にあわせて芝居を行う。治療される人は床の上で寝ており、霊媒師を中心に皆がトランス状態に入る。身体的な病気を治すというよりは心を癒すためのもの。この地域には、土地・人・霊が強く結びついているという考え方があるため、治療儀礼は土地を癒すためにも使われる。

**監督がこの映画で狙いとしたこと
-以前は、監督の出身地では様々な信仰が全て結びついて信じられてきた。また、女性は男性よりも強い存在であった。現在では信仰を結びつけて信じる考え方も、女性が強いという考え方も薄れているので、そういった失われた考え方を見せたかった。
-時間の流れを切って複雑に変化するシーン(唐突な場面転換)を多用することで、口承の伝統を見せたかった。口承において、時間は垂直に交わる。
-音楽をつかうことは極力控え、エスニックになりすぎないことを意識した。
-話し言葉にも環境音にも同じようにこだわった。“書くこと”の発見により、人の話し言葉は他の音より優位であるという考え方が生まれたが、もともと人が書くことを発見する以前は、風の音も取りの鳴き声も人の声も全て並列であった。
-物語を見てもらうのとは別に、多層的なものを見せたかった。