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フィールドワーク

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*フィールドワークとは何か
-狭義には一定期間の「住み込み調査」を指すが、ここでは広義に「野外調査」一般を指す
*オーラルヒストリー(インタビュー)
-An Oral History Primer http://www.csulb.edu/colleges/cla/departments/history/programs/oral/oralprimer/OHprimer.html
-An Oral History Primer http://www.csulb.edu/colleges/cla/departments/history/oral-history-program/an-oral-history-primer/
*訳文:オーラルヒストリー初歩
**はじめに
- オーラルヒストリーは対面調査を元にした一次資料で、個人へのインタビューをそのまま記録したものです。オーラルヒストリーのインタビューの目標は、個人の人生の体験や、事件およびある人物の思い出を文書化することです。しかしながら、これらの区別はあいまいで、三つの形式をそれぞれ定義できず、これまで自伝、テーマインタビュー、伝記的インタビューとして考えられていた。
- 歴史家は既存のオーラルヒストリーを使うか、そのひとなりのオーラルヒストリーを作ります。歴史家はどんな問題について調べるときでも、 たくさんの同じような基礎的な質問をします。自分のオーラルヒストリーのインタビューを記録するにしても、専門的な基準に注意を払い、以下にある倫理規定を守らなければならないと考えられます。たとえばOHAの以下を参照。http://ow.ly/1XC4IN
- この文書の目的はテープレコーダーの録音ボタンを押すだけでない、オーラルヒストリーの手順について慣れることです。次に上げる段階は比較的細かく一般的なもので、最初の二つの段階(疑問を明らかにし、背景の調査を行う、パート1)はオーラルヒストリーで記録される特定の文脈によるでしょう。あなたの課題やプロジェクトを定義し、その背景にふさわしい素材をさがすことについて、あなたのアドバイザーに尋ねることは重要です。オーラルヒストリーはたいへんですが、楽しいもので、怖がる必要はありません。
-- オーラルヒストリーを特定のクラスのプロジェクトとして使うことの他、この方法を進めることは、学部生の歴史の勉強を続けることにもなります。毎学期1科目のオーラルヒストリーの方法のクラスは、オーラルヒストリーの実践を通じ、研究プロジェクトを進める機会を持つに等しい。どんな事柄についても、オーラルヒストリーのプログラムは歴史学の一部として、学生にも教員にも研究文献資料を提供する。何か質問があれば、気軽にオフィスアワーに訪ねるか、emailを下さい。

**パート1:課題を準備する
-1.問題は何か

-2:背景の調査
--A.二次資料─記事、書籍、論文
--B.一次資料─例.国勢調査、労働力調査、大衆文化資料、その他個人的な体験など
--C.その他有効な資料─例.ある地域の地図や写真

-3:誰がインタビューされるか、どのように探し出すか
--A.人
---ある場合は、研究上の疑問からはじめられて、誰がインタビューされるかを決め、どのようにインタビュー対象を探し出すかという順序で、また別の場合には、先にインタビュー対象が決まっていて、インタビューの前に背景を調査する。
--B.インタビュー対象を選ぶ手順
---どこにふさわしい対象がいるか。どのように公正に広く代表的なグループを探すか。(必ずしも量的な代表者でない)
---オーラル・ヒストリーは、自発的なボランティアによるものと定義されます。ボランティアの本質とは何でしょう?

**第2部:オーラル・ヒストリーの手順
-I.インタビューの手順ー準備
--A.インタビューの準備─専門的基準
---事前にOHAによるオーラル・ヒストリーの基準と原理に目を通しておく。特に倫理基準に注意を払い、どの意味で、何に当たるかを含むインタビュー承諾書を用意する。ここでは、巻末の書式を使用する。
--B.インタビューの準備─資料
---オーラル・ヒストリーの手順の最初は、インタビューの概要を作成し、できるなら、今扱っているテーマに関連する出来事と語り手についての年表を作成する。(別紙Aのインタビュー概要見本を見よ)
---オーラル・ヒストリーは聞き手に導かれた語り手が自由な手順によって、その人自身の語りとして具体化されるということを覚えておきましょう。インタビューの概要は一般的なテーマを網羅していなければならず、聞き手の役に立ちますが、それに拘ってはなりません。
---私の助言としては、概要を作成し、背景調査の役に立ったなら、それを破棄してしまえということです。
--C.インタビューの準備ー事前連絡
---あなたがインタビューしようとする人に連絡し、しようとすることについて協力と理解を得ましょう。あなたがしようとしているインタビューの中の一般的な用語について説明しなさい。ある程度の経歴(そんなに詳しくなくてもよい)を入手し、これらの情報をあなたの調査概要と年表に役立てましょう。

---人というのはふつう、物事を順序通りに、時間に従って覚えているわけではないので、あなたが手に入れた詳しい履歴は、個人の人生の基準についてヒントを与え、重要である。(例:どこで生まれたか、いつ学校を出たか、いつ結婚し、子供を持ち、どんな仕事をしたか等)

---インタビューの準備がすべて完了したら、インタビューの予約をしましょう。インタビューの日時は相手の都合が最もよいときを選びましょう。これは特に体調の不安定な高齢の方の場合に重要です。
インタビューの前にも予約を再確認しましょう。

-II.インタビューの実施
--A.機材確認
---インタビューを始める前に、機材のテストをしましょう。テープを入れ、録音テストをしましょう。これは機材テストの確実な方法です。
---できるだけテープレコーダに外部マイクを接続しましょう。レコーダの一番よい置き場所は、聞き手に見えて話し手に見えない場所です。
---聞き手の話し手の向かいに座るのが理想的ですが、相手が居心地のよい場所を選ばせましょう。

--B.インタビュー記録
---オーラルヒストリーのインタビューはそれぞれ個別で、話し手ごとに構成されるものであることに注意しましょう。あなたは他の研究者の参考になるような新しい一次資料を作成します。これはできるだけ完全なインタビューを心がけるということです。これは一般的に、グループプロジェクトの目的が限られているにも関わらず、あなた自身の特定の見方を越えようということです。

---オーラルヒストリー実施の最も挑戦的な面の一つは、話し手と聞き手の関心事を一致させることです。もし聞き手が我慢強く、どこへでもインタビューに訪れれば、聞き手は問題を解決できます。

--一般的注意
---集中して、注意深く聴く
---我慢強く
---話し手が話止めても別の質問をしないこと。相手が記憶をたどるため、考える時間を与えること。
---聞き手は話し手が完全に話し終えるまで、話題を中断したり、変更したりしないこと。
---より詳しい質問、たとえば「~について話してもらえませんか」「~について説明してもらえませんか」と聞く前に、より一般的な質問と方向を示すことからはじめること。
---できるだけ、はいかいいえで答えられるような質問はしないこと。
---補足の質問をして、できるだけ詳しい情報を手に入れること。もし話し手が話を別の方向に持っていったらその方向に沿い、単純にあなたの概要の次の項目に入らないこと。
---オーラルヒストリーの魅力は、我慢強く、脱線した話に興味を持つなら、意外な成果が得られることだと覚えておきましょう。
---柔軟であれ。グループ全員と同じ話題で話していても、それぞれのオーラルヒストリーのインタビューは個別的で、話し手ごとに作られるものである。できる限り完全な情報を入手しましょう。もしあなたの準備していない方向に話の流れが行ってしまったら、議論を長引かせることになるので、事前により詳しい背景調査をしておくのがよいでしょう。
---礼儀正しくあれ、しかし突き詰めろ。たとえば、私たちが知っている事件や出来事と矛盾する内容があったら、話し手の経験がなぜ一致しないのか、語りの中に内部的矛盾があるのか、それらを理解するために深く質すことです。このことは、後々あなたのインタビューの質を判断するときに役立ちます。
---話し手の気持ちを尊重しましょう。たとえば、話し手が録音を止めたいと言ったら、そうしなければなりません。もし話し手が録音していないときに、あなたが録音するほど大事だと思ったことを話したら、記録してもよいか頼んでみましょう。それがなぜ大切であるか説明し、話し手の公にしたくないという気持ちを尊重するとともに、情報を記録することは理解してもらいましょう。もし合意が得られない場合は、聞き手は聞いた内容を秘密にし、何も公開すべきでないことを覚えておきましょう。
---ある場合には、話し手が匿名であることによって、完全で率直なインタビューができるかもしれません。ある場合には匿名または仮名であることが、最もよいか唯一のインタビューできる方法であっても、話し手は実名であることが望ましい。

--B(ママ).非言語メッセージの観察
---その他、いろいろな動作も記録されるべきだ。たとえば、長い沈黙、笑い、ため息など。聞き手は今後の分析に役立つよう非言語行動を記録しておくべきである。たとえば、話し手が非常に緊張しているか、具体的なインタビューの要点から注意を逸らしているようなら、聞き手はその内容についてもう一度聴くことを検討しなければならない。

--C(ママ).公開の許可
---インタビューが終わったとき、話し手に感謝の気持ちを表し、インタビュー内容の公開許可を得ましょう。(公開許諾書を参照)もしインタビューの内容が限られたプロジェクトの中で使われるだけで、一般に公開されないなら、聞き手は録音の最後に簡単な声明を記録するだけでもよい。録音の中で話し手に、聞き手個人の使用であることを確認しましょう。

--D(ママ).インタビュー後の記録
-インタビューの後、できるだけ速やかにフィールドノートを書きましょう。インタビューの背景と特別なふるまい(B参照)について記し、話し手がどのくらい腹蔵なく率直であったかについて聞き手の評価とともに、聞き手と話し手との信頼関係を築くのがどのくらい難しかったかを検討しましょう。これには聞き手の話し手に対する非言語動作の観察が役立ちます。

-III.インタビューの過程
--オーラルヒストリーの領域では、どのようにインタビューするかについて見解が一致していない。多くの人は音声の録音は基本資料となり、研究者は書き起こした文章を読むだけでなく、そのオーラルヒストリーを聴くべきです。確かにインタビューから何かを引用するためには、最終的には適当な一節を抜き出さなければなりません。それに加え、録音と書き起こしのどちらが一次資料なのかという基本的な問題が、資料的課題として残っています。一時間のインタビューを書き起こすには、六~八時間掛かります。

-A.録音を時間毎に要約する
--インタビューの時間を短く済ませることはとても簡単です。時間毎の要約はあなたが引用したいと思う箇所がどこにあるか、さがすための基本になります。それに加え、簡単で時間の節約になるインタビューのやり方は、録音内容の要約をつくる過程で内容を把握し、あなたのインタビュー技術を自己評価し、それらを継続的に改善することです。

-B.インタビューの書き起こし
--インタビューの書き起こしには、編集上の基本的決断が多くなされます。たとえば、どのように句読点を打つか、ためらいやつなぎことば(えーと、わかるでしょ等)をどのくらい取り入れるかです。別の言い方をすると、書き起こしはインタビュー録音の調整作業です。

--できるだけ話し手の話振りやくせ、動作を再現し、自由な調子で試みることができます。これは、語りというのはたとえば、句読点、段落などの文法的な構造にこだわらないということです。(別紙Cを参照)

--最後に、あなたがインタビューから引用したい場合、音声録音を基本資料として使うにしても、引用したい箇所をどのように書き起こすかを決めなければなりません。

**パート3:オーラルヒストリー・インタビューを使う
-I.インタビューを証拠として使う
--A.全体の分析
---あなたは自分の分析に使う箇所だけを選びたいでしょうが、全体の文脈から外れないようにすることが重要です。どんなインタビューが完全な伝達であり、どのような引用が全体の内容から外れないか考えましょう。

--B.確実性の価値
---階層の記憶は信用できるか?
---記憶の研究によると、多くの場合には、記憶の大部分の喪失は出来事が発生したあとすぐに起こっている。そして、よく知られている通り、長い間の記憶は短い間の記憶より不確実なものです。どの場合も何かの記憶を呼び起こすためには、写真や遺品などを含め、様々な仕掛けが使われている。

---より不確実なのは、色付きレンズを通じて経験したことを呼び起こすことです。話し手の評価は、当時の考えより現在の考えに従って説明されていないか?行為の細部を追求すればするほど、より簡単に判断できます。
同じように、深く再認識することによって自叙伝を書く場合は、話し手が細かく話せば話すほど、それは独り善がりになります。一方、あなたが議論されていない物事やアイデアを探求したいなら、新鮮な視点で見る必要があります。言い換えると、無意識に話せば話すほどよりよいのです。

-偏見の問題
--どのような種類の偏見がオーラルヒストリー・インタビューに最も影響するか。
--聞き手は誘導的な質問をしたか。
--どんな偏見が聞き手の聞き方を導いたか。証拠はあったか。
--話し手は聞き手を満足させようとして、相手がほしがる情報を与えなかったか。

--話し手を選ぶ中での偏向を判断するためには、選考の過程を分析する必要があります。
--話し手に誰を選ぶか、その人の特質や特定の身分や立場によるものだったか。
--よりふさわしい話し手だったか。

-妥当性の問題
--あるテーマについて、話し手の話の内容と、私たちの知識が一致していない場合はどうすればよいか。簡単に否定してしまうより、その原因を究明することが大事である。特定の話し手の経験が、事実と違う原因なのか。--したがって、インタビューで伝記資料を記録し、より深く矛盾を調べることが必要です。(話し手の語りの中での明らかな矛盾と他のデータとの食い違い)

--あなたが歴史と取り引きし、聴いている事柄を理解しようとしていることを忘れないようにしましょう。あなたはオーラルヒストリー収集の中で特別なチャンスを持ち、矛盾と不一致を調べることができます。

--C.資料を点検する
---他の資料から見つからず、オーラルヒストリーでしか得られないものは何か?

-一つのインタビューから何を学ぶことができるか?
--オーラルヒストリーは伝記や回想、追憶による事実のようなものであることを覚えておきなさい。同じ種類の疑問は史料および日記(即座に記録されたかどうかに関わらず)の両方に当てはまります。

*参考文献
-アジア農村研究会『学生のためのフィールドワーク入門』めこん、2005
-市川健夫『フィールドワーク入門―地域調査のすすめ―』古今書院、1985
-京都大学『京大式フィールドワーク入門』NTT出版、2006
-佐藤郁哉『フィールドワークの技法』新曜社、2002
-箕浦康子『フィールドワークの技法と実際ーマイクロ・エスノグラフィー入門』ミネルヴァ書房、1999