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14/01/13/3

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サブゼミ報告

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ICT

町づくり

メディツー

日アジ

グロスタ

ホームステイ

トラライ

授業内容

発表者① 田中悠介 

作品…『さよなら・再見』黄春明著

あらすじ…時代は1970年代後半で、日本ではバブル経済が始まり景気がよく、円高を背景に多くの日本人が海外へ出ていった。舞台は日本の植民支配から解放された台湾。「私」は勤務先の会社社長から大事なお客である日本人たちを自分の郷里の温泉地、礁渓温泉へ案内し、特別の接待をするように命じられている。この日本人客たちの目当ては女性で、反日感情をもつ「私」は「ポン引きの仕事」を引き受けるか否かについて悩むが結局業務命令を実行する。7人の日本人客をとのやり取りの中で、終始様々な葛藤を感じながら、皮肉を込めたジョークを交えつつ会話を盛り上げていく。温泉地についた一行はそれぞれ買春するが、そこで「私」は日本人料金として規定より多くの金額を支払わせる。また温泉地からの帰途、一行は汽車の中で台湾大学の4年生に出会う。日本に憧れを抱いているらしいその若者の態度に不快を感じた「私」は、日本人に対しては中国侵略戦争を、若者に対しては民族の誇りの欠如を、それぞれ相手が指摘している、と偽りの通訳をする。

分析…一行の旅程を地図で示した後、台湾における買春観光について、4つの点を指摘した。 ⅰ働く女性について、当時の台湾は経済発展はそれほど進んでおらず、庶民の暮らしは貧しく、貧困のために男相手の商売につく少女も多かった。 ⅱポン引きの文化について、土地に不慣れなものを騙し金品を盗み取る、または街頭で売春を斡旋するといったもので台北市内では特に横行していた。 ⅲ日本人(外国人)価格について、ⅳ中国文化圏の性に対する文化について解説した。

発表者② 瀬戸健

作品…『リスボン日記 寛容をめぐる指摘断想』横木徳久著

あらすじ…故郷新潟、第二の故郷に憧れ出た東京での暮らしに嫌気がさし、戦後の日本が失ったなにかがあるという一種の勘でポルトガルに移住を決めた著者であるが、海外での生活の中で日本を嫌悪しながら日本人であることを強く認識させられる矛盾を抱える中、なぜ自分がリスボンに魅了されたのかを探していく。

分析…「第三の故郷」の項で描かれるリスボンに魅了された理由と日本を嫌悪する訳について二つのキーワード「ゲニウス・ロキ」、「郷愁」を挙げ解説した。 著者は10代の頃から好きだった室生犀星の「第二の故郷」の詩より、異郷の地しかも東京という都市空間の中で「故郷」という感覚が蘇生する事実に憧れた。第一の故郷新潟に愛着を持たなかったために、「第二の故郷」として東京を追い求めていた。東京の街を歩くことが旅先にいるような感覚から、大学を卒業し社会人になってからは「故郷になりつつある」と感じ始める。 しかし、バブル経済期以降、固有の風土を尊重する「ゲニウス・ロキ」の思想に反する東京の景観づくりに直面し、東京への愛着も失われていく。そんな折り、旅行で訪れたポルトガルに懐かしい感情を抱き、故郷としての懐かしい感情を追い求めリスボンに移住した。 懐かしさ→自分が生まれるはるか前の「文明」と「それを生んだ古い心性」に触発される →三島由紀夫の表現を引用し「郷愁」と表現。 ポルトガル語「saudade(郷愁)」も不在を前提とした感情→文明やそれを生んだ古い心性が滅びたとしても、ポルトガルには文明の質感が何らかの痕跡、名残が感じられたからこそ「懐かしい」と感じられた。 著者は文明の質感を通して、近代以前の日本を重ね合わせていたが東京は文明だけでなく、その痕跡までも滅びてしまった。 →著者は郷愁を感じられ、ほっとできるポルトガルのリスボンこそ「第三の故郷」と評した。